ティエポロ〈ペガサスに乗ったベレロポン〉
ベレロポンとは「ベレロスを殺した者」
ある日、シーシュポスの孫ヒッポノオスは誤って兄弟のベレロスを殺してしまいました。それ以後、彼は「ベレロスを殺した者」という意味の「ベレロポン」と呼ばれるようになりました。
彼は兄弟殺しの罪を清めてもらうため、ティリンスの王プロイトスの元に身を寄せることになりました。
ベレロポンのキマイラ退治
プロイトス王の妃ステネボイアは、たちまち若く美しいベレロポンに恋をしてしまいました。
しかし、ベレロポンは身を寄せている王の妃を相手にすることはできません。
「ベレロポンに犯されそうになった」
と、王妃は怒りと屈辱で夫に嘘の訴えをしました。ベレロポンを預かっている手前、プロイトス王は彼を殺すことができません。
「この手紙を持ってきた者を殺してくれ」
と、王はリュキアの王イオバテースへの手紙をベレロポン自身に持たせ送り出しました。
イオバテース王は彼を殺す計画を思案し、キマイラ退治を命じました。
キマイラはテュポンとエキドナとの間に生まれた怪獣。頭が獅子、胴が牡山羊、尾が蛇、口からは火を吐きます。
ベレロポンは、まずキマイラを偵察しました。地上からではキマイラを倒せそうもないので、ペガソスに乗り空から攻撃することを思いつきました。
〈アテナとベレロポン〉
アテナの黄金の轡(くつわ)
ベレロポンの父親グラウコスは大の馬好きで、人肉を与え、気性の荒い逞しい馬を育てていました。結果、父親は荒ぶる馬に振り落とされ、食われたといわれています。ベレロポンも馬が好きで乗るのも得意でした。
そんな彼でもペガソスを捕らえ、どう乗りこなせば良いか分かりません。そんな彼に手をかしたのが女神アテナ。ペガソスを捕まえるのに黄金の轡(くつわ)を与え、乗りこなせるよう黄金の手綱をも与えたといわれています。
女神アテナの轡と手綱により、ベレロポンはペイレーネーの泉で水を飲んでいたペガソスを見事捕らえました。すかさず、ベレロポンはペガソスにまたがり、天高く飛びあがりました。
ティエポロ〈キマイラを退治するベレロポン〉出典
ベレロポンのキマイラ退治
ペガソスにまたがったペレロポンはキマイラのいる山の洞窟へ向かい、キマイラが洞窟から出てきたところをすかさず空から攻撃。まず、鉛を口に放りこみ、火炎を吐けなくし、槍でその頭を刺し貫きました。
イオバテース王は驚嘆しました。まさかキマイラを倒してしまうとは思ってもみなかったからです。思案した後、次はアマゾネスの討伐を命じました。これも、ベレロポンはやり遂げて帰還。王はその功績に感嘆して、プロイトス王の手紙の件を彼に話し、娘の婿に彼を迎えました。
王妃への復讐
しばらくリュキアで暮らしていたベレロポンは、ティリュンスへ帰ることにしました。彼を落としめた王妃ステネボイアに復讐したいと思い始めていたからです。
ベレロポンが帰ってくると、王妃ステネボイアはうわべは喜んで迎えました。また、プロイトス王には内密に彼に謝罪もしました。しかし、王妃の悪意を知っている彼の怒りはおさまりません。
「お妃様、ペガソスに乗って大空高く駆けてみませんか」
王妃もペガソスに乗ってみたいと思っていましたので、その誘いを受け入れました。二人を乗せたペガソスは、は天高く飛び立ちました。充分な高さまでくると、ベレロポンは一瞬ためらいましたが、王妃を突き落とし復讐を遂げたのです。
ベレロポンの死
ある日ベレロポンはペガソスに乗っていた時、どこまで高く天に上がれるか試してみようと思いました。
そして、オリュンポス山の神の神殿が見えるくらい高く飛んでいました。これにゼウスが激怒、虻(あぶ)を放ちました。虻はペガソスの尻を刺し、ペガソスは驚いて暴れ、ベレロポンを振り落としてしまいました。
モロー〈キマイラ〉モロー独自のキマイラの姿です。