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テレマコスとメントル(女神アテナ)〈テレマコスとメントル(女神アテナ)〉

あらすじ

オデュッセウスの僚友メントルが集会でイタケの人々を非難し、求婚者たちが不正を働いている理由を説明しました。メントルは求婚者を非難するのではなく、それを許している人々を非難しました。

レオクリトスはメントルの非難に反論し、状況の厳しさを訴えました。その後、女神アテナが降臨し、テレマコスに対して求婚者たちの悪行を忘れ、船と若者を準備するよう指示しました。

アテナはテレマコスに変身して町中を歩き、若者たちと船の手配を行いました。

夜になり、アテナは求婚者たちに眠りをもたらし、テレマコスに出発を促しました。テレマコスは船に向かい、準備した食料と酒を取りに屋敷へ行くよう若者たちに指示しました。

オデュッセウスの僚友メントル、イタケの人々を非難

オデュッセウスの僚友メントル(女神アテナではない)は嘆きました。
「イタケに住む人々よ、もはや正義はないに等しい。だから、求婚者たちが狼藉を働いているのも、別に怪しいことではない。彼らはオデュッセウスが帰らぬと思い、命をかけてそうしているのだ。

私が許せぬのは、イタケの人々よ、そなたたちだ。数に勝るそなたたちが誰も口をつぐんで、求婚者らを制止できないとは、何たる醜態であろう」

レオクリトスが憤慨して、
「無礼だぞ、メントルよ。求婚者たちの飲み食いのことを言いがかりにして、我らを咎めるのか。数においても勝る彼らと戦うのは容易なことではない。

たとえオデュッセウスが帰ってきて、求婚者たちと戦っても勝ち目があるとは思えぬ。ペネロペイアにしても、20年間待ちわびたのだからすぐに喜べぬだろう。

さあ、もう散会してそれぞれの仕事に戻ろう。テレマコスの支度は、お主とオデュッセウスと親しかったハリテルセスがすることになろう。

はたして、テレマコスが旅に出られるかどうかはわからぬがな」

こうして、集会は終了しました。求婚者たちは今日もオデュッセウスの屋敷に飲み食いに行きます。

テレマコスは女神アテナに祈ります。
「昨日私に助言してくださった神よ、どうかお聞きください。傲慢無礼な求婚者たちは、何かにつけ私を妨害いたします」

メントルに姿を変えた女神アテナ降臨

すると、女神アテナが降臨し、メントルの姿を借りて話します。
「テレマコスよ、今や求婚者どもの企てや思惑は一切忘れなさい。彼らは思慮もなく、正義を忘れた乱心者です。すでに黒き死の運命が迫っています。やがて一日のうちに全員討ち果たされる運命に気づいておらぬ。

酒と食料を準備しておきなさい。すぐにも旅立つことになりましょう。私が船を選び、水夫になる若者に声をかけ、同船いたします」

テレマコスが屋敷に帰ると、アンティノオスが近づいてきます。彼はテレマコスの手を取ると、語りかけます。
「テレマコスよ、もう大口を叩かず、我らと共に飲み食いしよう。そなたが旅に出られるよう、誰かイタケの人が準備してくれるだろうからな」

「アンティノオスよ、もはやそなたたちと共に飲食をするつもりはない。小さい頃は何もわからなかったが、成人した今となっては、旅に出ようが出まいが、そなたたちに死神を差し向けるつもりだ。

私はこれから旅に出る。船が調達できなければ、誰かの船に便乗してもよい」

そう言うと、テレマコスはアンティノオスの手を振りほどきました。

酒と食料を用意するために、貯蔵室に降りると、乳母であり侍女である老女エウリュクレイアを呼びました。
「これから旅に出るが、母には気づかれないようにしておいてくれ」

テレマコスになったアテナ、水夫と船を手配

女神アテナは今度はテレマコスの姿に変わり、町中を歩いて水夫となる若者たちを集め始めました。また、船の手配をノエモンに頼みました。

陽が落ちると、アテナは必要なものをすべて船に積み込みます。声をかけた若者たちも集まってきます。

その後、アテナはメントルの姿に変わり、テレマコスの屋敷へやってきました。たむろしている求婚者たちには眠りをふりかけ、屋敷から各自の家へ帰るよう仕向けます。

「テレマコスよ、そなたに随行する若者たちはすべて船に集まっている。出発を遅らせてはならぬ。さあ、出かけるとしよう」

テレマコスは船に着くと、若者たちに声をかけました。
「さあ、準備した食料と酒を取りにわが屋敷へ行こう。そして出発だ!」