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ギリシャ戦士〈ギリシャ戦士〉

オイディプスが自分の息子二人にかけた呪いが、とうとう成就されるのか?

テーバイ市の7つの城門を囲む兄ポリュネイケスを含むアルゴス勢の7将。今、戦いが始まろうとしています。 テーバイの乙女たちは戦いを恐れますが、テーバイ王エテオクレスは「臆病風を吹き込むのはやめろ!」と彼女らを叱ります。

その後、エテオクレスは第一のプロイティデス門、第二のエレクトライ門、第三のネイスタイ門の敵将に対する将を手配します。

アイスキュロス作『テーバイ攻めの7将』①
コロス=テーバイの乙女たち
オイディプスの息子=兄ポリュネイケス(アルゴス勢)と弟エテオクレス(テーバイ王)

コロスとは?
ギリシャ悲劇における合唱隊で、物語の補足説明や感情の表現を担当します。物語の背景や登場人物の心情を伝え、合唱やダンスを通じて観客に物語の重要な要素を伝えます。

オイディプスの呪い、テーバイ市を襲う

[テーバイ城内の広場。外には敵のアルゴス勢]

(テーバイ王エテオクレスと市民登場)

エテオクレス
ゼウスよ、御名にふさわしく、カドモス人の町(テーバイ)を禍いより救いたまえ。みなの者、兜に身を固め、急ぎ7つの城門に向かえ。俺は、敵軍の様子を探るために物見の者を出しておいた。

(使者登場)

使者
エテオクレス王、アルゴス軍の7人の将がやってきました。我がテーバイを蹂躙するため、彼らの心は戦いを挑む獅子の如くです。
また、7人の将は我がテーバイの7つの城門のどれを攻めるかを今決めているようです。それゆえ、我が軍の将もただちにそれぞれの門に向かわせるべきです。
エテオクレス
おお、わが父オイディプス、復讐の呪いよ。

戦いを恐れるテーバイの乙女たち

(エテオクレスと市民退場)

コロス
軍神アレス様、この地の守りの神々、おいでくださいませ。
7人の雄々しい敵の将が、7つの門に迫っています。
われらの町の運命は、どうなることでしょうか?
天はこの結末をどのようにお定めになるつもりでしょうか?
おお、われらの神々、お救いくださいませ。

(エテオクレス登場)

エテオクレス
女ども、泣き叫ぶのはやめろ。町の人々に禍いなる臆病風を吹き込むのはやめろ。だから、逆境にあっても喜ばしい栄の中にあっても、女どもと一緒に住まうのは真っ平だ。家の外のことは男の仕事。女は口出ししてはならぬ。
コロス
おお、オイディプスのご子息。耳を打つ戦車の響きが恐ろしいのです。
エテオクレス
それがどうした。騒いだとて、救いの道が見つかるとでも言うのか。
コロス
いえ、いえ、破滅の轟きがお城の門に迫った時、神様方を信じ、その御像へかけ寄りました。
エテオクレス
寄せ来る敵を城壁が防いでくれるよう、これがお前たちの祈ることだ。
コロス
神々がお見捨てなさらないように。この町を敵が踏みにじり、恐ろしい火を放つのをこの目にしませぬように!
エテオクレス
神の名を呼ぶ愚かな真似はやめにせい。
コロス
神の力は、禍いからも救ってくださいます。城壁が敵の大軍を防いでくれるのは神のおかげ。私たちは、どうして王様のお叱りを受けなければならないのですか?
エテオクレス
町の者どもに臆病風を吹き込まぬようにだ。静かにして、うろたえ恐れるでないと申しておるのだ。
おれも行って、7つの門の一つを守ろう。

(エテオクレス退場)

コロス
とはいえ、胸は恐れに波立ち、心に迫るこの心配。
悲しいことよ、清らかな乙女には。
つぼみの花を摘まれて、家を後に忌まわしい旅路に着くとは!
いえいえ、死んだ方がましというもの。
町が敵の手に渡れば、襲うは不幸の数々。
勝ちを得た敵にかしずき、夜毎の伽(とぎ)をするほかありません。
コロスの長
ほれ、あそこにオイディプスのお子、エテオクレス王と使者がおいでになられます。

第一、プロイティデス門の敵将はテュデウス

(エテオクレスと使者、左右から登場)

使者
エテオクレス王、敵の7つの門の将を申し上げます。まずは、プロイティデス門にはテュデウス。
占いが凶と出たため、予言者アムピアラオスがイスメノス川を渡ることを禁じています。それゆえ、テュデウスは合戦を望んで荒れ狂い、叫び、川の向こう岸で予言者アムピアラオスを臆病者と罵っています。
その楯は、ものものしいほどの豪華さ!星の輝く大空、その真ん中に夜の目なる星の中でも一番貴い満月が煌々と輝いています。このテュデウスには、誰を当てましょうか?
エテオクレス
はて、この愚かしさは運命の先触れ。死んだ男の目に夜の闇がおりれば、この持ち主にはうってつけのものとなるであろう。この驕慢な占いをわれとわが身に下したことになるであろう。
テュデウスには、アスタコスの尊い子メラニッポスをプロイティデス門につかわそう。テーバイでは古き尊い名門の生まれ。名誉を重んじ、思い上がった言葉を憎む男だ。勝負は、軍神が賽で決する。
コロス
神々よ、我らの将に武運を与え給え。
正しくも国のため、出陣いたすのでございます。

第二、エレクトライ門の敵将はカパネウス

使者
第二のエレクトライ門には、カパネウス。かなりの巨人で、その大言壮語は人間のものではありません。われらが城に向かって恐ろしい言葉を吐いております。この町を荒らして、目の前にゼウスの雷が落ちようが俺を止めることはできぬ、とまでほざいております。その楯には、松明の武器に「われはこの町を焼かん」と書かれています。この者には誰を?
エテオクレス
カパネウスめ、神々をないがしろにし、脅し文句を吐いておる。ゼウスに向かって轟き渡る大言を送っておるのだ。ゼウスの雷が必ずや彼を撃つであろう。奴には、その減らず口など物の数ではない、燃えさかる意気の勇者ポリュポンテスがはや任ぜられておる。
コロス
町に向かって壮語する男は滅びよ!
雷よ、あの人を撃ちつけておくれ。

第三、ネイスタイ門の敵将はエテオクロス

使者
第三のネイスタイ門には、エテオクロス。城門には鼻息荒い馬を回らせています。その楯の印には、強者が敵の城壁にかけた梯子を登っていき「軍神とて俺を城門から投げ落とすことはできぬぞ!」と書いてあります。エテオクロスには誰を。
エテオクレス
エテオクロスには、スパルトイの一族、クレオンの子メガレウスだ。直ちにこの男を差し向けよう。狂い立つ馬のいななきに怯えて城門から退くこともない。
コロス
おお、われらが家のために戦う者よ!
栄光あれ、敵には悲運を!