1話5分で読めるギリシャ神話

ギリシャ神話の神・女神・英雄のエピソードが、絵画で分かりやすい。また、ギリシャ神話はあなたの美術鑑賞に役立ちます。〈アートバイブル〉も、絵画でわかりやすい聖書です。

カラスが黒い理由

島根県:野室庸司さん撮影「純白のカラス」
〈純白のカラス〉島根県:野室庸司さん撮影

純白のカラス
アポローンはテッサリアのプレギュアースの娘コローニスを愛し、彼女は身ごもりました。その頃、彼は話すこともできる純白のカラスを彼女との連絡係にしていました。

コローニスは父親には反対されていましたが、カイネウスの兄弟イスキュスという青年を好み、彼とも情を通じていました。

コローニスとイスキュスが密会していることを目撃したカラスは、アポローンに告げ口しました。アポローンは怒り、矢をコローニスに放ちました。矢は彼女の胸を射抜きました。彼女は矢を抜くと、真っ赤な血に胸を染めながら、アポローンに言いました。
「赤ちゃんを産んでから、罰を受けることもできましたのに」

おまえは、一生喪に服くしていろ!
アポローンは、激しい後悔に襲われました。あんなにもかっとなった自分、我が弓と軽々しい矢を憎みました。また、差し出がましくも彼女の罪を知らせたあの純白のカラスをも。彼は、カラスに言い放ちました。
「おまえは、一生喪に服くしていろ!」
この時から、白いカラスは黒いカラスに変わったのです。

アポローンに射られるコローニス
〈アポローンに射られるコローニス〉

アスクレーピオスの誕生
ところで、彼女は身ごもっていました。アポローンはその子を取り出すと、ケンタウロスの賢者ケイローンに預け育てさせました。ケイローンはたいそう喜び、この子に医術をはじめ、狩猟の技、諸々の知識を教えました。この子が、医術の神アスクレーピオスです。彼は人間の死を防ぐばかりか、死者をも蘇生させました。また、アテーナからゴルゴーンの血を得て、左の血管から出た血で人を破滅させたり、右の血管より出た血で人を蘇生させたりもしました。

たとえば、〈テーセウス物語〉ではこんなことがありました。
テーセウスの後妻パイドラーは、テーセウスの息子ヒッポリュトスに恋をしてしまいました。が、その恋は彼から受けいれられず、彼女は「ヒッポリュトスに辱めを受けました」と遺書を残し自殺。テーセウスは、ポセイドーンに息子に災いが起こるよう願いました。

その結果、ヒッポリュトスは馬車から転げ落ち、手綱に絡まり、瀕死の状態になりました。女神アルテミスが真相をテーセウスに話すと、彼は息子のところに駆けつけ、彼を許しました。が、ヒッポリュトスは父の腕の中で死にました。アルテミスはヒッポリュトスの死を悼み、アスクレーピオスを説き伏せてヒッポリュトスを蘇生させました。

テーセウス物語 後編〉参照

アスクレーピオスの師
しかし、冥界の王ハーデースはゼウスに訴えました「アスクレーピオスの蘇生術が、冥界の掟を犯している」と。また、ゼウスも人間がアスクレーピオスから医術を教えられ、互いに助けあうことを懸念しました。神の力を願わなくなるからです。ゼウスは雷霆でもって、彼を撃ち殺しました。

父アポローンは怒りました。が、ゼウスに歯向かうことはできません。彼は、代わりに雷霆を作ったキュクロプス達を殺しました。今度はゼウスが激怒、アポローンをタルタロスに投げ込もうしました。あわてたアポローンの母レートーはゼウスに乞い、ゼウスは彼に一年間人間に使えることを命じることで許しました。アポローンはペレースの子アドメートスの牛飼いとして、すべての牝牛に双生児を生ませるようにしました。

※アスクレーピオスの母は、アルシノエーという説もあります。

アポローン、ケイローン、アスクレーピオス
〈アポローン、ケイローン、アスクレーピオス〉ナポリ国立考古学博物館