1話5分で読めるギリシャ神話

ギリシャ神話の神・女神・英雄のエピソードが、絵画で分かりやすい。また、ギリシャ神話はあなたの美術鑑賞に役立ちます。〈アートバイブル〉も、絵画でわかりやすい聖書です。

クリュティエ ひまわり

アポローンとレウコトエ
アントワーヌ・ボワゾ〈アポローンとレウコトエ〉

女神アフロディーテと軍神マルスとの密通を女神の夫ヘーパイストスに告げたのは、太陽神アポローンです。
これを根にもったアフロディーテは、アポローンに仕返しを果たします。また、息子エロースの矢を使って。

アポローンは太陽神です。毎日きちんと日の出と日没の時間を決めて、太陽の二輪車を御します。それが今や、日の出の時刻に遅れたり、冬なのに日没の時刻を遅らせたりしています。また、その心の陰りを日食という形で表したりもします。この乱れは、すべてレウコトエへの恋のためです。

レウコトエは、ペルシャ王オルカモスの妃・絶世の美女エウリユノメの娘です。娘の美貌の方が、母に勝っていたということです。

ある日、大空を朝から日没まで二輪車を駆けおえたアポローンは母のエウリユノメに変身して、レウコトエの部屋を訪れました。彼女は12人の侍女にかしずかれて、糸を紡いでいました。母親に変身したアポローンは、彼女に接吻すると侍女たちに言いました。
「娘と大事な話がありますので、みなさんは部屋から出てください」

侍女たちが部屋を出ていくと、
「私は、一年の基準となる神だ。いつも大空から万物を見下ろしている。また、私の放つ明るさによって、万物全てが見分けられるようになる。いわば、私は世界の眼(まなこ)なのだ。その私が、お前に恋をしてしまった」

レウコトエはびっくりして、手にしていた糸巻棒を落としてしまいました。その可憐な姿にアポローンは本来の姿に戻り、彼女を抱きしめました。レウコトエも、その神々しさに抗うこともなく、身を任せてしまいました。

このことを知ったアポローンの恋人水のニンフ・クリュティエは嫉妬に燃えました。
「今までの私への愛は、どこは行ってしまったのか!人間の分際で私を押しのけるとは、決して許せない!」

クリュティエは父王オルカモスのところへ出向くと、あることないこと告げ口しました。
「お前の娘は淫らだ。その色気で太陽神を誘惑し、密通している。いつになっても、彼を私に返してくれない!」

気性の荒い父王は、怒りからレウコトエを深い穴に埋めてしまいました。

大空からそれに気付いた太陽神はすぐに駆けつけ、穴から救出しましたが、もはやレウコトエには生気はありませんでした。体を光線で温めたりして生き返らそうとしましたが、無駄でした。アポローンは、息子パエトーンの死以来の悲しみに襲われました。だからといって、決してクリュティエのもとに戻りませんでした。

彼女は失恋の痛みに憔悴し、やせ細っていきました。9日の間、姉妹の顔を見るのもいやで、食事もとらず、化粧もせず、地面に座っていました。ただただ、朝から晩まで大空をゆく太陽神に自分の顔を向けているだけです。そして、いつのまにか大地に根を生やし、「ひまわり」になってしまいました。
※「ひまわり」ではなく、「ヘリオトロープ」という説(オウィディウス:変身物語)もあります。

クリュティエ
イーヴリン・ド・モーガン〈クリュティエ〉