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水のニンフ・クリュティエ
〈水のニンフ・クリュティエ〉

アポロン恋に乱れる!

女神アフロディテと軍神マルスとの密通を女神の夫ヘパイストスに告げたのは、太陽神アポロン(「ヘリオス」とも)です。これを根にもったアフロディテは息子エロスの矢を使って、アポロンに仕返しを考えます。

アポロンは太陽神。毎日きちんと日の出と日没の時間を決めて、太陽の二輪車に乗り天を駆けます。それが今や、日の出の時刻に遅れたり、冬なのに日没の時刻を遅らせ、長く西の空にいます。

また、その心の陰りが日食という形で表われています。この乱れは、すべてレウコトエへの恋のためです。

レウコトエ、絶世の美女エウリュノメーの娘

レウコトエは、ペルシャ王オルカモスの妃・絶世の美女エウリュノメーの娘。娘の美貌の方が、母に勝っていたということです。

ある日、大空を朝から日没まで二輪車を駆けおえたアポロンは母のエウリュノメーに変身し、レウコトエの部屋を訪れました。彼女は12人の侍女にかしずかれて、糸を紡いでいました。

母親に変身したアポロンは、彼女に接吻すると侍女たちに言いました。
娘と大事な話がありますので、みなさんは部屋から出てください

侍女たちが部屋を出ていくと、
私は、一年の基準となる神だ。いつも大空から万物を見下ろしている。また、私の放つ明るさによって、万物全てが見分けられるようになる。いわば、私は世界の眼なのだ。その私が、お前に恋をしてしまった

レウコトエはびっくりして、手にしていた糸巻棒を落としてしまいました。その可憐な姿にアポロンは本来の姿に戻り、彼女を抱きしめました。レウコトエも、その神々しさに抗うこともなく、身を任せてしまいました。

クリュティエのレウコトエに対する嫉妬

このことを知ったアポロンの恋人である水のニンフ・クリュティエは嫉妬に燃えました。
今までの私への愛は、どこは行ってしまったの! 人間の分際で私を押しのけるとは、けっして許せない!

クリュティエはレウコトエの父オルカモス王のところへ出向き、あることないこと告げ口します。
お前の娘は淫らだ。その色気でアポロンを誘惑し、密通している。いつになっても、神を私に返してくれない!

気性の荒い父オルカモス王は、怒りからレウコトエを深い穴に生き埋めにしてしまいました。

ひまわりになったクリュティエとレウコトエの死

天空を駆けていた太陽神。すぐに気付いて駆けつけると、穴からレウコトエを救出しました。

しかし、もはや彼女には生気はありません。体を光線で温めたりして生き返らそうとしましたが、無駄でした。アポロンは、息子パエトーンの死以来の悲しみに襲われました。

アポロンはレウコトエの墓に天界のネクタルとアンブロシアを注ぐと、美しい香木が生えてきたといいます。

しかし、決してクリュティエのもとには戻りませんでした。

クリュティエは、失恋の痛みにやせ細っていきました。9日の間、姉妹の顔を見るのもいやで、食事もとらず、化粧もせず、地面に座っていました。ただただ、朝から晩まで大空をゆく太陽神に自分の顔を向けているだけです。

そして、いつのまにか大地に根を生やし、「ひまわり」になっていました。

※「ひまわり」ではなく、「ヘリオトロープ(太陽の方を向くもの)」という説(オウィディウス:変身物語)もあります。

ヘリオトロープ

〈ヘリオトロープの代表種キダチルリソウ〉

クリュティエ
モーガン〈クリュティエ〉