1話5分で読めるギリシャ神話

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メレアグロス

カリュドーンの猪退治
ルーベンス〈カリュドーンの猪狩り〉

メレアグロスは、アルゴー船の遠征に参加した勇者。カリュドーンの王オイネウスとその妻アルタイアーの子供です。

アルタイヤーは彼を生む時、運命の三人の女神モイラを見ました。運命の糸をつむぐこの女神たちは、「いま炉の中で燃えている薪が燃え尽きると、その子も死ぬであろう」と予言しました。彼女はすぐその燃えている薪を取り出すと、火を消し大切に保管しました。
そして、メレアグロスは青年になり、りっぱな勇者となりました。

ある日、オイネウス王が神々に生け贄を捧げた時、女神アルテミスだけを忘れてしまいました。これに憤慨した女神は、カリュドーンの地に一頭の大きな猪を送りました。その目は炎のように輝き、その毛は槍のように逆立ち、牙は象のようでした。実りかけた穀物を踏みにじり、ぶどうやオリーブの木を荒らし、羊や牛も蹴散らしてしまいます。

とても自分たちだけでは倒せないと思ったメレアグロスは、ギリシャ中の勇者に声をかけて「猪退治」を結集しました。テーセウス、イアソーン、アキレウスの父となるペーレウス、後にトロイア戦争に参加したネストールなどの勇者が参加してきました。その中に、アルカディア王イーアソスの娘アタランテーもおりました。その輝く美しさと凛々しい姿に、メレアグロスは彼女をたまらなく好きになりました。

森の中の沼地に、猪はいました。さっそく犬たちをけしかけましたが、犬たちはその牙になぎ倒されてしまいます。イアソーンは女神アルテミスに祈り、槍を投げました。猪を送ったのがその女神です。当然、その祈りは通じません。が、自分に向けられた祈りに気を良くした女神は、命中することだけは許しましたが、刺さる前に槍の先を外してしまいました。このように、猪に傷をつけるのは難しかったのです。

そうこうしているうちに、女神アルテミスは飽きてしまい、眠りにつきました。

メレアグロスとアタランテ
ヤーコブ・ヨルダーンス〈メレアグロスとアタランテー〉

とうとう、アタランテーの放った矢が猪に命中し、血を流させました。それは軽い傷でしたが、メレアグロスは驚喜して叫びました。
「アタランテーが第一の殊勲者だ!」

これに反感を持ちったアンカイオスは名乗りをあげ、猛然と猪に向かっていきましたが、逆にその牙により、殺されてしまいました。テーセウスもイアソーンも槍を投げましたが、命中しません。そして、メレアグロスの第一の槍は外れましたが、第二の槍はみごと腹を刺し貫き、猪を倒すことができました。

「ウォー!」と、大歓声がおきました。メレアグロスは、頭と毛皮を第一の殊勲者としてアタランテーに与えました。

「なんで女なんかに!」
反感を持った他の者も多かったのですが、母アルタイアーの弟たちプレークシッポスとトクセウスは特に反対し、アタランテーからその戦利品を奪ってしまいました。自分が愛した彼女に対するこの侮辱に怒ったメレアグロスは、親族である叔父二人の心臓を剣で突き刺してしまいました。

いっぽう、母アルタイヤーは、息子の成功に神殿に供物を捧げに行きました。そこに彼女の弟二人の死体が運ばれてきました。彼女は泣き叫び、胸をうち、喜びから悲しみに転落してしまいました。そして、殺したのが息子であると知ると、今度は悲しみが復讐心に変わりました。

アルタイヤーはあの運命の薪を取り出してくると、火をおこすよう命じます。そして、火の中に四度薪をくべようとしますが、息子への愛がためらわせます。母親としての感情と姉としての感情が争います。

「復讐の女神さま、息子の成功の喜びだけでいいものでしょうか。罪には罪をもってあがなわなければなりません。あぁ〜、私は何をするのだろう!弟たちよ、母としての私の弱さを許しておくれ。あの子のしたことは、死にあたいします。でも、母である私がわが子を殺してもよいのでしょうか?でも、あの子がこのカリュドーンの地で誇らかに生きていている時、弟のあなたたちが黄泉の国をさまよっている......いいえ、それは決してなりません」

とうとう姉としての感情が打ち勝ち、運命の薪を火の中に投げ入れました。薪は恐ろしい呻きをあげました、いや、あげたように聞こえました。

遠くにいたメレアグロスは体に苦痛を感じると、体が燃えはじめました。戦いの場ではなく、このような不名誉な死に対して、彼は勇者の誇りから毅然としていましたが、死が近づくと、年老いた父の名、兄や優しい姉たちの名、アタランテーの名、そして最後に母親アルタイヤーの名を叫び死んでいきました。

アルタイヤーは、薪を火に投げ入れたあと、われとわが身を殺めました。また、メレアグロスの姉たちの悲しみは、決して慰められることはありませんでした。このことを知ると、女神アルテミスは、彼女たちを鳥に変えてやりました。