1話5分で読めるギリシャ神話

ギリシャ神話の神・女神・英雄のエピソードが、絵画で分かりやすい。また、ギリシャ神話はあなたの美術鑑賞に役立ちます。〈アートバイブル〉も、絵画でわかりやすい聖書です。

供養する女たち 後編

復譬の女神に追跡されるオレステスまたはオレステスの自責
ウィリアム・アドルフ・ブグロー〈復譬の女神に追跡されるオレステスまたはオレステスの自責〉

コロス
「セウス様、どうお祈りすればよろしいのでしょう。今まさにオレステス様がたった一人で、二人に向かいます。勝利をお与えくださいませ」

〔門の奥からアイギュストスの絶叫が聞こえてくる〕
アイギストス
「やられた、おのれ」
小性
「大変だ!大変だ!ご主人様が、アイギスト様が刺し殺された。クリュタイメストラ様、どちらにおいでですか?」
〔クリュタイメストラ、婦人棟の戸口から出てくる〕
クリュタイメストラ
「どうしたことです、何のための叫びですか?」
小性
「生きている方を、死んでいる人が討ったというので」
クリュタイメストラ
「その謎かけの言葉、わかりました。誰か武器を持て、勝つか負けるか、決着を付けよう」

〔オレステスとピュラデス、館の門から出てくる。その足元にアイギュストス〕
オレステス〔クリュタイメストラに向かって〕
「あなたを探していたところです」
クリュタイメストラ
「ああ、アイギュスト様、愛しいお方」
オレステス
「この男が愛しいのですか、なら、同じ一つの墓に埋めてあげましょう。もうけっして裏切ることはできないでしょう」

〔クリュタイメストラひざまづき、衣を裂き、胸を出して〕
クリュタイメストラ
「待っておくれ、オレステス、お前がたっぷり飲んだこのお乳に免じて」
オレステス
「ピュラデス、どうしたものか、母親を殺すというのは」
ピュラデス
「アポロン神の予言はどうなるのか、立派に誓ったその真実は。誰もが敵だと思え、神々を敵に回すより」
オレステス
「ピュラデス、君は正しい、立派に諌めてくれた。〔クリュタイメストラに〕さあ、あの男のそばで、命を取ってあげましょう」

〔クリュタイメストラ、何度も何度も命乞いする。が、オレステスは動じず〕

クリュタイメストラ
「じゃあ母親を、どうあっても、お前は殺すというんだね」
オレステス
「いえ、私ではなく、あなた自身が自分を殺すんです」
クリュタイメストラ
「気をおつけ、母親の呪いの犬に用心しなさい」

〔オレステス、クリュタイメストラを門のアイギュストのそばで殺す〕

コロス
「この有様を見るにつけて、二重の不幸を嘆くほかはありません」
オレステス
「ごらんなさい。父を殺し、館を奪い劫掠した者たちを。これで、私はアポロン神が命じられたことをやり遂げました。もし父の弟メネラオス様が来られたら、どうしてこの禍いがもたらされたのか、証人になってください。私はこの故郷を出て、諸国を流浪しなければなりません。ほら、あすこに黒い衣を着て、ゴルゴンのような髪いっぱいに蛇がまといついている復讐の女神が...」
コロス
「しっかりなさい、怖がらないで。大きな勝利を得たのですから」
オレステス
「そいつらは幻なんかじゃない。はっきり見えるんだ、これは母親の恨みを含む犬どもだ。ああ、アポロンの御神、こいつらはいっぱい押しかけてきます、目から嫌らしい血をたらしながら」

〔オレステスとピュラデス、逃げるように退場〕

オレステイア三部作第3作:慈みの女神たち 前編