1話5分で読めるギリシャ神話

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ヘルメースの誕生

雄弁の神(ロギオス)としてのヘルメース像
〈雄弁の神(ロギオス)としてのヘルメース像〉

ヘルメースはゼウスとマイアの子
今後自分の役にたつ伝令として、ゼウスは嘘と泥棒の才を持つ神がほしくなりました。妃ヘーラーには外出する嘘をついて、夜になるとこっそりマイアを奪いに行きました。ゼウスは自分のこのような行動(嘘と泥棒)が、生まれてくる息子に遺伝するようにしたのです。マイアは巨人アトラースの7人の娘プレイアデス(昴)の長女です。

ヘルメース、アポローンの牛50頭を盗む
赤子のヘルメースはさっそく泥棒の才を生かして、アポローンの牛50頭を盗みました。行方が分からないように牛を後ろ向きに歩かせるという賢さもありました。しかし、アポローンは占いの神ですので、すぐにヘルメースの仕業だと気付きました。

アポローンは、ヘルメースを見つけると、
「牛を返せ、この小せがれが!」
「生まれたばかりの僕が、50頭もの牛をどうして盗めるの?」

アポローンは、ヘルメースをゼウスの前に連れて行きました。
「ゼウス様、この赤子は牛50頭を盗んでおきながら、『赤子の自分にできるわけがない』と嘘をつきました」
ゼウスは、嘘と泥棒の才があるヘルメースに内心ほくそ笑みました。が、牛を返すようヘルメースをさとしました。

ケーリュケイオンの杖
牛を返してもらったアポローンはまだ納得できず、怒っていました。すると、ヘルメースは亀の甲羅で作った竪琴を奏ではじめました。アポローンはその竪琴が欲しくなり、牛と交換してもらいヘルメースを許しました。また、ヘルメースが葦笛を作ると、アポローンは持っていたケーリュケイオンの杖と交換してもらいました。このことから、ヘルメースは商売の神としても崇められるようになりました。

また、このように小さい頃からあちこち歩き回ったことから、旅人たちの守護神とも崇められています。

ケーリュケイオン
ケーリュケイオン(左)とアスクレーピオスの杖(右)
ケーリュケイオンは医術の伝統的なシンボルであるアスクレーピオスの杖と混同され、保健・医療のシンボルとして用いられることが多い。しかし、アスクレーピオスの杖は、蛇は一匹だけで翼はない。

アルゴスの殺戮者(アルゲイポンテース)
ゼウスの妃ヘーラーが牛のイーオーを100個の目が一緒にすべて眠ることのない怪物アルゴスに監視させていた時、ゼウスはヘーラーに気づかれないようヘルメースを呼び出すと、イーオーの救出を命じたました。

ヘルメースは羊飼いをよそおい、アルゴスに近づきました。長話をしたり、得意の葦笛を吹いたりして、怪物を眠らせようとしたのです。だが、アルゴスの100の目は、すべてが一緒に閉じることはありません。あげくのはてに「その草の笛は珍しいね。見たこともない、どうしたのかね」と尋ねてくるしまつ。

ヘルメースはしかたなく、長話をはじめました。
「シュリンクスという森のニンフがいてね。狩の女神アルテミスと同じように男嫌い、女神に似て美しくもあった。ある日、獣神パーンに言いよられて、逃げて、とうとう川辺に来てしまった。もう逃げられないと思った彼女はね、どうしたと思う?わが身を変えてほしいと神に願ったんだ。結果、彼女は草の葦に変わったんだよ。その葦がね、風にゆれ、その茎の空洞が美しい調べを奏でていた。それで、パーンはこの草で笛を作った....それで葦笛はシュリンクスと呼ばれるようになったってわけさ」

長話をしていたヘルメースは、アルゴスを見ました。とうとう、その目は100個すべて閉じられていたのです。すかさず、彼は持ってきた剣でその首をたたき落としました。ヘルメースは「アルゲイポンテース(アルゴスの殺戮者)」と呼ばれるようになりました。
ヘーラーはアルゴスをあわれに思い、100個の目をお気に入りの孔雀の羽につけました。

ところで、『金の斧、銀の斧』日本では女神が湖から出てきますが、西洋ではこのヘルメースが出てきます。知っていましたか?

ヘーラーとアルゴス
ルーベンス〈ヘーラーとアルゴス〉