1話5分で読めるギリシャ神話

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求婚者誅殺の日

求婚者の誅殺
ルイ=ヴィンセント=レオン・パリエール〈求婚者の誅殺〉

〈オデュッセイア 第二十二歌〉

アンティノウスとエウリュマコスの最後

オデュッセウスは求婚者の筆頭の一人アンティノウスの咽喉に矢を放った。矢はのどを射抜くと、彼はぐらりと体が傾き、持っていた杯を落とした。
「エウリュマコスよ、もはや貴様らは戦うか、逃げるしかないのだ」

「各々方、今や我ら一団となって、オデュッセウスに立ち向かおうではないか。誰でも良い、この危急を外の者に知らせよ」
こう言うと、エウリュマコスは両刃の剣を抜き去って、凄まじい声を張り上げ、オデュッセウスに躍りかかった。オデュッセウスは素早く矢を放つ。矢はエウリュマコスの胸を貫く。彼は食卓の上につっぷした。料理や酒杯などが、床に散乱する。

アンピノモスは唯一の逃げ道戸口からオデュッセウスを離すべく、剣を抜いて躍りかかった。が、テレマコスがその背後から槍を投げると、槍は背中から胸に突き刺さり、アンピノモスは顔から倒れこんだ。

その後、兜と盾、武器を倉から持ってきたテレマコスと豚飼い、牛飼いも武具に身をまとい、オデュッセウスのかたわらに駆けつける。オデュッセウスは矢の続く限り、求婚者たちをつぎつぎと射殺していった。矢がつきると、弓を置き、二本の槍を取った。

求婚者の誅殺
ルイ=ヴィンセント=レオン・パリエール〈求婚者の誅殺〉

求婚者たちの反抗

求婚者の一人アゲラオスが
「誰か、町の者たちに一刻も早く危急を伝えよ!」
「それは無理なこと。それよりもあなた方が武装できるよう、私が倉に行って武具を持ってきましょう」
性悪な山羊飼いメランティオスはそう答えると、広間の風穴から抜け出し、倉に入って行った。武具を持ってきて、求婚者たちに渡すと、彼らは武装しはじめた。
求婚者はまだまだ多く残っていたので、さすがのオデュッセウスもたじろいた。

テレマコスは叫んだ。
「倉に鍵をかけなかったのは、私の手落ち。エウマイオスよ、誰が倉に入ったのか、調べてくれ」
そうこうしているうちに、性悪な山羊飼いメランティオスは再び倉に向かった。豚飼いと牛飼いは、彼が倉に入ったところで捕らえ、宙吊りに縛り上げた。その後、二人はオデュッセウスのもとに戻った。

求婚者の誅殺(モロー)
モロー〈求婚者の誅殺〉

女神アテーナの鼓舞

女神アテーナはオデュッセウスと同年代のメントルに姿を変え、オデュッセウスに歩み寄った。オデュッセウスはメントルが女神だと察し、彼に声をかけた。
「メントルよ、わしに力を貸してくれ!」
「オデュッセウスよ、そなたにはもうトロイア戦争の時の気概も力も残っていないのか」
女神はそう言うと、姿を隠した。女神の意図は、オデュッセウスを鼓舞することであったのだ。

アゲラオスはじめ求婚者一同は
「各々方よ、まず六名が槍をオデュッセウスに投げよ!」
一同は槍をオデュッセウスに投げたが、女神はすべての矢を逸らした。オデュッセウスらも、槍を投げて応戦した。こうして、求婚者たちは次々と倒されていった。
牛飼いは、クテシッポスの胸に槍を命中させると叫んだ。
「クテシッポスよ、この一撃はオデュッセウス王に投げつけた牛の足のお返しだ!」

生き残りは二人、楽人ペミオスと伝令使メドン

求婚者の一人レオデスは、オデュッセウスに嘆願した。
「オデュッセウスよ、あなたの膝にすがってお願いする。私は屋敷の女に手を出していない。皆にも、そうせぬよう止めていた。しかし、わしの言葉に誰も従わなかったのだ。彼らの中で、わしは占いの役を務め、悪事は何も犯していない。が、同じ骸になるのであろう」
「占いの役を務めていたのなら、わしの帰国が成就せぬよう、ぺネロペイアが貴様についてきて子を産むよう願ったのであろう」
オデュッセウスは一刀のもとに、彼の首をはねた。

女神アテーナもアイギスを掲げると、求婚者たちは恐怖に駆られ、右往左往し始めた。そこをついて、オデュッセウスたちは求婚者全てを殺していった。
生き残ったのは、テレマコスがオデュッセウスに助命を嘆願した楽人ペミオスと伝令使メドンだけであった。

また、オデュッセウスは老女エウリュクレイアに不義を働いた女中の名を確かめると、テレマコス、豚飼い、牛飼いに首吊りの処刑を命じた。性悪な山羊飼いメランティオスは鼻と耳を切り落とされ、陰部をむしり取られ、手足も切断された。

オデュッセウスは、老女エウリュクレイアに告げた。
「婆やよ、硫黄と火を持ってきてくれ。屋敷を浄めようと思う。それから、ペネロペイアと女中たちにここへ来るよう伝えてくれ」

こうして、求婚者誅殺の日は暮れようとしていた。

女中を罰するオデュッセウス
ニコラス・アンドレ・モンシアウ〈女中を罰するオデュッセウス〉