1話5分で読めるギリシャ神話

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バウキスとピレーモーン

ゼウスとヘルメースをもてなすバウキスとピレーモーン
〈ゼウスとヘルメースをもてなす老夫婦〉

菩提樹と樫の木
プリュギュアの丘の沼のほとりに、大きな菩提樹と樫の木が生えています。そばには、立派な神殿も建っています。この沼は、かつて人がすんでいた村だったのです。

ある夜、大神ゼウスとその子ヘルメースは疲れた旅人をよそおい、この村に一夜の宿を乞いに訪れました。しかし、泊めてくれるような村人は、一人もいませんでした。とうとう、村はずれのみすぼらしい最後の一軒の戸口を叩くことになりました。

「こんな時間にすまないが、我ら二人を泊めてくださらぬか」
「ええ、ようございます。ごらんのように、たいしたお持てなしはできませんが」

こうして、ゼウスたちは、貧しい老婆バウキスとその夫ピレーモーンの家に宿をとることができたました。老婆は二人を海藻のクッションの上にシーツを敷いた椅子に座ってもらいました。そして、お湯をわかし、二人の足を洗ってあげました。

老夫婦のもてなし
夫が庭から新鮮な野菜をとってくると、老婆はベーコンと一緒にシチューを煮はじめました。テーブルは薬草入りの水で、きれいに拭かれました。オリーブの実と酢漬けのヤマグミの実がのせられ、残り少ないチーズも添えられました。シチューができ上がると、上等ではありませんが、甕(かめ)からブドウ酒も注がれました。ゼウスたちが食事をする間、二人を飽きさせないよう、夫婦はできる限りのお話もしました。

そうこうしているうちに、夫婦はあることに気づきました。ブドウ酒が少しも減っていないばかりか増えているのです。さらに、香りも良くなってきているのです。そこで、二人の客が神さまであることに気づいたのです。

「神さまとは知らず、こんな粗末な食事をお出ししてすみません。どうぞお許しください」

一羽のガチョウ
ピレーモーンは、家で飼っていた最後の財産というべき一羽のガチョウを料理することにしました。ガチョウはすばしこく、老夫婦はなかなか捕まえることができません。ガチョウはゼウスの足元にかくれました。その時、
「このガチョウを殺してはならぬ」とゼウスは告げ、話し始めました。

「我々は天の神々である。この不遜な村に、天罰を下すためにやってきた。が、最後のチャンスもやろうとした。一軒、一軒村人を訪ねたのだ。しかし、村人は誰一人、私たちに親切にしてくれなかったばかりか、戸口にも出てはこなかった。そのため、この村を水の底に沈めてしまうことにした。しかし、あなた方二人は助けることにした。私たちの後について、丘までくるがよい」

大洪水
ジョン・マーティン〈イメージ(大洪水)〉

村の水没と神殿
こうして、ゼウスとヘルメースの後について、老夫婦は丘の上にやってきました。すると、村は水に被われてしまいました。さらに、老夫婦の家の辺りに、大理石と彫刻で飾られた立派な神殿が現れました。

「まれにみる徳の高い老人たちよ、何なりと望みのものを申してみよ」
「それでは、私たちはあの神殿の祭司になり、神さまを死ぬまでお守りしとうございます。そしてまた、この世を去る時には二人同時に去らせてください。お互い相手を弔うという悲しい目にあわずにすむようにしてください」
ゼウスは、二人の願いを聞き入れました。

老夫婦の死
数年後、老夫婦は神殿の階段にすわり、語り合っていました。すると、バウキスは夫の身体から木の葉がゆっくり生えてくるのに気づきました。ピレーモーンも同じように妻の身体から木の葉が生えてくるのを見ていました。木の葉は身体を多い、頭を被い、最後には顔も被いはじめました。二人は口が利けるあいだ、別れの言葉をかわしあいました。
「さようなら、愛しい人よ」
二人同時に言いおえた瞬間、木の葉はすっかり二人の顔を隠していました。

菩提樹と樫の木のいわれです。

旧約聖書「創世記」第19章参照:二人の天使がロトを訪れ、その後ソドムとゴモラが破壊されます。ロトへの訪問ソドムとゴモラ

バウキスとピレーモーン
ヤヌス・ジェネリ〈バウキスとピレーモーン〉