1話5分で読めるギリシャ神話

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ピューラモスとティスベー

ピューラモスとティスベー
アンドレアス・ネッセルサラー〈ピューラモスとティスベー〉

小さな割れ目の純愛
ここはセミーラミス女王が統治するバビロニア。
誰よりも美しい若者はピューラモス。誰よりも美しい処女はティスベー。二人の家は、隣どうし。二人が育つにつれて、二人の間に愛が目覚め、育まれてきました。今では、親も気付かないように目や仕草で、お互いの思いを伝え合うことができるようになりました。

しかし、両親たちは二人の愛を許してはくれません。

家の間の壁には、二人にしか分からない小さな割れ目がありました。毎日、二人はこの割れ目を通してこっそり愛をささやいています。

桑の木の下で
ある日、二人はバビロニアの国はずれのニノスの霊廟にある1本の白い桑の木で待ち合わせることにしました。そこには、清らかな泉もあります。

ティスベーは誰にも分からないように、ヴェールで顔を隠して桑の木のところにやってきました。しばらくすると、口を血で真っ赤にした牝ライオンが、泉の水を飲みにやってきました。彼女急いで逃げ出しましたので、ヴェールを落としてしまいました。
ライオンは水を飲み終え森に帰ろうとした時、そのヴェールを見つけました。そして、血のついた口でヴェールをもてあそび、引き裂いてしまいました。

血まみれのヴェール
少しして、ピューラモスがやってきました。桑の木に近づくと、血まみれでズタズタに引き裂かれたヴェールを見つけ、接吻しながら彼は嘆きました。
「あぁ、かわいそうなティスベー!私のせいで君は死んでしまった。あぁ、彼女を殺した野獣よ、私もその牙で引き裂いてくれ」
「私の血もそのヴェールにしみ込ませよう。血だけでも一緒になろう」

彼は剣を抜き、自分の胸を突き刺しました。吹き出した血は、白い桑の木を真っ赤に染めました。また、流れた血は桑の木の根から吸い上げられ、その赤い色は幹を登り、桑の実まで登っていきました。

「私も勇気を出して、あなたの元へ」
「あぁ〜、ピューラモスが待ちくたびれているわ」
辺りをこわごわ見ながら、ティスベーは戻ってきました。
「え?これがあの白い桑の木、真っ赤になってる。場所を間違えた?」

すると、何やら桑の木の近くからうめき声が聞こえてきます。息も絶えだえのピューラモスでした。
「なんということでしょう!ピューラモス、しっかりして、ティスベーよ」
彼を抱きかかえる、ピューラモスは「ティスベー」という声に一瞬目を開けました。が、また閉じてしまいました。

その時、ティスベーは気付きました、胸に突き刺さった剣に。
「あぁ、あなたは私が死んだと思ったのね。私も勇気を出して、あなたの元へまいります。もう、死さえ私たちを引き裂くことはできません。神よ、私たちをひとつの墓に埋めてください。そして、桑の木よ、私たちの血があなたを真っ赤に染めたことを忘れないで」
ティスベーはピューラモスの胸に刺さった剣を引き抜くと、自分の胸に深く突き刺しました。

桑の実が赤いのは、ピューラモスとティスベーの血が流れているからです。

神は二人の意をくんで、両親たちにひとつの墓に葬るよう命じました。
「お前たちが二人の愛を許していれば、こんなことにはならなかったのだ」

ロミオとジュリエット
そう『ロミオとジュリエット』のモチーフになった物語です。