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ピューラモスとティスベーネッセルサラー〈ピューラモスとティスベー〉

ピューラモスとティスベー、壁を通しての純愛

ここはセミラミス女王が統治するバビロニア。

誰よりも美しい若者はピューラモス。誰よりも美しい乙女はティスベー。二人の家は、隣どうし。二人が育つにつれて、二人の間に愛が目覚め、育まれてきました。今では、親も気付かないように目や仕草で、お互いの思いを伝え合うことができるようになりました。

しかし、両親たちは二人の愛に気づいても、許してはくれません。

家の間の壁には、二人にしか分からない小さな割れ目がありました。毎日、二人はこの割れ目を通してこっそり愛をささやいています。

ティスベー、桑の木の下で

ある日、二人はバビロニアの国はずれのニノスの霊廟にある1本の白い桑の木で待ち合わせることにしました。そこには、清らかな泉もあります。

ティスベーは誰にも分からないように、ヴェールで顔を隠して桑の木のところにやってきました。しばらくすると、口を血で真っ赤にした牝ライオンが、泉の水を飲みにやってきました。彼女は急いで逃げ出しましたので、ヴェールを落としてしまいました。

ライオンは水を飲み終え森に帰ろうとした時、そのヴェールを見つけました。そして、血のついた口でヴェールをもてあそび、引き裂いてしまいました。

ピューラモスと血まみれのヴェール

少しして、ピューラモスがやってきました。桑の木に近づくと、血まみれでズタズタに引き裂かれたヴェールを見つけ、接吻しながら彼は嘆きました。

「あぁ、かわいそうなティスベー! 私のせいで君は死んでしまった。
あぁ、彼女を殺した野獣よ、私もその牙で引き裂いてくれ。
私の血もそのヴェールにしみ込ませよう。血だけでも一緒になろう」

彼は剣を抜き、自分の胸を突き刺しました。吹き出した血は、白い桑の木を真っ赤に染めました。また、流れた血は桑の木の根から吸い上げられ、その赤い色は幹を登り、桑の実まで登っていきました。

ティスベー「私も勇気を出して、あなたの元へ」

「あぁ〜、ピューラモスが待ちくたびれているわ」
辺りをこわごわ見ながら、ティスベーは戻ってきました。

「え? 白い桑の木が真っ赤! 場所を間違えた?」
すると、何やら桑の木の近くからうめき声が聞こえてきます。息も絶えだえのピューラモスでした。

「なんということでしょう! ピューラモス、しっかりして、ティスベーよ」
彼を抱きかかえる、ピューラモスは「ティスベー」という声に一瞬目を開けました。が、また閉じてしまいました。

その時、ティスベーは気付きました、胸に突き刺さった剣に。

「あぁ、あなたは私が死んだと思ったのね。私も勇気を出して、あなたの元へまいります。もう、死さえ私たちを引き裂くことはできません。

神よ、私たちをひとつの墓に埋めてください。そして、桑の木よ、私たちの血があなたを真っ赤に染めたことを忘れないで」

ティスベーはピューラモスの胸に刺さった剣を引き抜くと、自分の胸に深く突き刺しました。

桑の実が赤いのは、ピューラモスとティスベーの血が流れているからです。

神は二人の意をくんで、両親たちにひとつの墓に葬るよう命じました。
「お前たちが二人の愛を許していれば、こんなことにはならなかったのだ」

※ピューラモスとティスベーは『ロミオとジュリエット』のモチーフになった物語

ロミオとジュリエット