レーテル〈ネメシス〉
ネメシスの意味は元来「義憤」
ネメシスは、人間の思い上がった無礼な行為に対する神の怒りから罰を与える女神です。
ネメシスの意味は元来「義憤」の意味ですが、よく「復讐」と間違えられます。有翼の女神で、夜の女神ニュクスの娘とされます。
ネメシスの意味の二面性
ネメシスは二面性を持ち、呵責のない復讐の面とその復讐をなだめ恩恵をほどこす面があります。
ネメシスは運命の女神とよく間違われることから、砂時計を持っている姿で絵画に描かれます。しかし、ネメシスと砂時計との関係を説明している神話は見つかりませんでした。
一般的には、運命の女神はクロト、ラケシス、アトロポスの3人です。クロトは運命の糸を紡ぎ、ラケシスはその糸の長さを決め、アトロポスが最後に糸を断ち切ります。
ギリシア悲劇においては、復讐の女神は「エリニュス」として、神罰の執行者としてしばしば登場します。
またアテナイでは、ネメシスの祭「ネメセイア」が行われました。これは十分な祭祀を受けなかった死者の恨みが、生者に対して悪いことをしないように、とりなしをすることが主な目的です。
モロー〈ネメシス〉
ネメシス、ナルキッソスに罰を与えた?
エコーの愛を拒んだナルキッソスに罰を与えたのは、ネメシスであると言われています。
ナルキッソスは傲慢で、多くの女性の愛を冷酷にも拒んできました。そのうちの一人が神様に「ナルキッソスにも、身を焦がすかなわぬ恋を」と祈ったのです。
ネメシスは傲慢で冷酷なナルキッソスに、義憤を感じたのでしょう!
一方、今までナルキッソスは多くのニンフにもエコーと同じ仕打ちをしていました。その中の一人が、神に祈りを捧げました。
「どうか、神様、ナルキッソスにも、身を焦がすかなわぬ恋をさせてください」
その祈りを、復讐の女神ネメシスが聞き入れました。
ネメシスがヘレネの母とされる一説
ゼウスはネメシスと交わろうとしましたが、ネメシスはいろいろな姿に変身して逃げました。しかし、ネメシスがガチョウに変身した時、ゼウスは白鳥となって交わりました。
ネメシスは2つの卵を生んで、この卵を羊飼いが見つけました。羊飼いは、この2つの卵をスパルタの王妃レーダーに献上しました。この2つの卵から、1つはアガメムノンの妻クリュタイメストラ、もう1つからディオスクロイが生まれたとされます。
しかし、この2つの卵の両親は、ゼウスと女神レーダーとされる説の方が有力で一般的です。