アタランテー、黄金のリンゴを拾う
(更新日:2020.01.18)
グイド・レーニ〈ヒッポメネースの投げる黄金の林檎を拾うアタランテー〉
「アタランテーよ、なんじは結婚してはならぬ。結婚すればその身は滅びるであろう」
彼女はこの神託に怯え、男をさけて、ひたすら狩猟に身を捧げていました。
アタランテーは女としも美しく、凛々しい男にも見えました。そのため、多くの求婚者をさけるため、ある条件を提示していました。
「私と競争して勝った方のところへ褒美として参ります。だが、もし私に負けた方は、罰として死んでいただきます」
その厳しい条件にもかかわらず、競争しようとする者が何人かいたのです。
ヒッポメネースは、最初は競争の審判をするつもりでいましたので、「たかが女ひとりのために、そんな危険をおかすバカな者があろうか」と言っていました。
しかし、競争のさいに長衣を脱いだアタランテーの姿を見ると、彼は考えを改めて言いました。
「私の誤りを許してくだされ、諸君、君たちが求めている褒美を知らなかったのだ」
そして、ヒッポメネースは、みんな負ければいいと思っていました。彼女に勝てそうな若者を見ると、嫉妬で狂いそうにもなりました。
また、実際に走るアタランテーはさらに美しく、足には翼が生えているかのようです。そよ風のごとく、水の上をすべるような走りです。若者たちはみんな競争に負けて、殺されてしまいました。
「今度は、私が相手になりましょう。今までのようにはなりませんよ」と、ヒッポメネース。
アトランテーは思いました、
「どんな神さまが、この美しい若者をそそのかして命をすてるようになさるのだろう。この美しい方が、お気の毒。できれば、私より早く走ってくれますように」
ヒッポメネースは、アフロディーテに祈りを捧げました。
「アフロディーテさま、どうか、お助けくださいますように。あなた(恋)ゆえに、ここまできましたのですから」女神は、その願いを聞き入れ、恵みをたれました。
アフロディーテの島キュプロスの神殿の庭には、黄色の葉と黄色の枝と黄金の実をつけた1本の木があります。「黄金のリンゴ」です。女神はその実を3個もいで、ヒッポメネースにそっと渡し、その使い方も教えました。
いよいよ、スタートの時です。
最初は接戦でしたが、ヒッポメネースはだんだん息切れし、のどもカラカラです。アタランテーが前に出ました。このまま放される訳にはいきません。ヒッポメネースは、ここで「黄金のリンゴ」をアタランテーの前に投げました。彼女はビックリしましたが、その「リンゴ」を拾いました。その間に、ヒッポメネースは彼女を抜き去りました。
彼女は二倍のはやさで、また彼を抜きさりました。彼は2個目の「黄金のリンゴ」を投げ、抜き返しました。しかし、また追いつかれてしまいました。ゴールが迫ってきました。残る「黄金のリンゴ」は1個です。
「女神さま、あなたの贈り物に力をお与えください」
ヒッポメネースは、最後の「黄金のリンゴ」を、横に遠く投げました。ゴールに近かったのですが、女神の力もあり、アトランテーは「黄金のリンゴ」を拾いに行きました。こうしてヒッポメネースは勝利し、彼女を褒美として持ち帰ったのです。
〈女神キュベレーと二頭のライオン〉出典
こうして、二人は幸せに暮らすようになったのですが、ヒッポメネースは恋にうつつを抜かし、アフロディーティにお礼をすることを忘れていました。当然、女神は怒り、ふたりに女神キュベレーの機嫌を損なうようにしむけたのです。ふたりは神聖な女神キュベレーの神殿で、性行為を行なってしまいました。
女神キュベレーは激高して、二人をライオンに変えてしまいました。こうして、2匹のライオンはいつも女神の両側に侍っていたり、女神の二輪車を引いているのです。
※女神キュベレー(ギリシャ神話ではレア)はクロノスの妻で、ゼウスの母です。