1話5分で読めるギリシャ神話

ギリシャ神話の神・女神・英雄のエピソードが、絵画で分かりやすい。また、ギリシャ神話はあなたの美術鑑賞に役立ちます。〈1話5分で読める聖書-アートバイブル

アポローンと月桂樹になったダプネー

(更新日:2021.02.17)

アポローンの初恋、『月桂樹になったダプネー』です。
ベルニーニの彫刻は、見事にその瞬間を形にしました。大理石なのに、まるで宙に浮くかのような軽やかさです。
『ペルセポネーの略奪』の彫刻と一緒に、まさにバロック芸術のベルニーニの傑作です。

アポローンと月桂樹になったダプネー
ベルニーニ〈アポローンとダプネー〉

若きアポローンのプライド

大洪水の後、肥沃となった地上には様々な生物や怪物が育っていました。中でも、パルナッソス山に住むピュトーンと呼ばれる大蛇が、人間の脅威となっていました。

そのピュトーンを弓矢で退治したのが、若きアポローンです。そのことを得意に思っていた彼は、小さいエロースが弓矢を持っているのを見て言いました。
おい、いたずら坊主。弓矢なんか持つんじゃない!
弓矢は、私のような怪物を倒した者が持つ武器なんだ。
わかかったら、松明でも恋の火にして、
決して弓矢なんか持つんじゃない

エロースの金の矢と鉛の矢

アポローンさん、ボクの矢は
あなたの胸にだって刺さるんですよ

そう言うと、エロースは恋心を燃やす〈黄金の矢〉でアポローンの胸を射抜きました。たちまち、アポローンは初めて見たダプネーへの恋にとらわれてしまいました。アポローンの初恋でした。

一方、エロースは恋をはねつける〈鉛の矢〉で河の神ペーネイオスの娘ダプネーの胸を射抜きました。
ダプネーは
恋など汚らわしい
と思うようになり、言いよる男性は、ずべて拒否するようになりました。父は娘に
結婚して、私のためにも孫を生んでおくれ
と頼みました。が、ダウネーは
あの女神アルテミス様のように、
私を処女のままでいさせて下さい

と父の首にすがりつきました。

ダプネーの父の不安

その美しい顔がそうはさせないだろう.....
父は不吉な思いにとらわれました。
アポローンは何とかしてダプネーと結婚したくてたまりません。全世界に神託を授ける彼自身でさえ、恋は盲目というのでしょうか。自分の運命は見えなかったようです。

髪の毛がみだれていても、あの美しさ!
きちんと結ったらどれほどの美しさになるだろう!

ダプネーの瞳、唇、なで肩、腕の細さ、さらに隠れたところを想像すると、アポローンはもう見ているだけでは満足できません。ダプネーを追いかけるようになりました。

しかし、彼女は軽やかに風のように逃げてしまいます。
待っておくれ、話だけでも聞いておくれ
と、追いかけるアポローン。

僕はゼウスの子、歌と竪琴の神、デルポイの神託の神なのだ。
だから、逃げないでおくれ。
つまずいたりしないか、怪我をしないか心配なのだ。
ゆっくり駆けてくれれば、ゆっくり追いかけるよ

ダプネーにはその声は届かず、走りつづけます。その後ろ姿にさえ、アポローンはうっとりしてしまいます。

ああ、僕の矢よりもっと手痛い矢が胸を貫いてしまった!
医師の神であるこの私でさえ、癒やす薬草を知らない

アポローンは恋の翼に乗り、恐怖の翼に乗ったダプネーを追いかけます。

月桂樹へ変身するダプネー

とうとう、アポローンの息吹きがダプネーのうなじにかかりそうになった時、彼女は叫びました。
お父さま、助けて〜。私を隠して〜。
でなければ私の姿を変えて下さい。
お父さまにもらったこの姿のために、
私はこんな恐ろしい目にあっているのです!

ダプネーの叫びが終わるか終わらないうちに、彼女の手足はこわばり、その胸は樹の皮におおわれはじめました。髪の毛は葉に、腕は枝となり、足は地面にしっかりと根付いていきます。
びっくりしたアポローンは、まだその中ではダプネーの身体がふるえている樹を抱きしめ、樹にキスをしようとしました。しかし、樹になったダプネーはそれさえも拒むのでした。

アポローンは誓いました。
きみをもう妻にはできない。
が、この樹〈月桂樹〉は枯れることのない
僕の聖樹にしよう。勝者の冠にしよう!

それに答えるかのように、月桂樹の枝が一瞬ゆれました。

アポローンとダプネー
ピエロ・デル・ポッライオーロ〈アポローンとダプネー〉

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