【ディオニュソスの誕生】母セメレーの悲劇
(更新日:2023.03.26)
ゼウスの頭からから生まれた女神アテーナ。そして、ゼウスの腿(もも)から生まれたディオニュソス。女神アテーナは父ゼウスに可愛がられましたが、生まれてからのディオニュソスは、父ゼウスとの接点はありません。
しかし、ディオニュソスは小さい時から独立独歩で確固たる神の座を自分の力で得ています。また、民衆からも尊敬されています。もちろん、ディオニュソスが酒の神、西洋でのワインの原料ぶどうの神であることも大いに影響していることでしょう。
ギュスターヴ・モロー〈ユピテル(ゼウス)とセメレー〉モロー美術館
ディオニュソスは大神ゼウスの子
ゼウスの妃ヘーラーは嫉妬から、ディオニュソスの母となるセメレーを憎みました。ヘーラーはセメレーの乳母ベロエーに化けると、セメレーをそそのかします。
「婆やは心配でたまりません。恋人は本当にゼウス様なのでしょうか? 嘘をつく男は多いのですよ。天上でのお姿を見せてくださるよう、お願いしたらどうでしょうか? もうすぐお子様も生まれてくるのですから」
セメレーは乳母ベロエーの言葉をもっともだと思い、密会に来たゼウスにお願いしました。
「ゼウス様。1つお願いがあります、かなえてくださいますか?」
「何なりと言ってごらん、あの冥界の河スティクスに誓ってかなえてあげよう」
「天界でのゼウス様の神々しいお姿を、ここでも見せてくださいますよう」
彼女の願いを聞いたいたゼウスは、後悔しました。
しかし、スティクス河に誓ったからには、神々でさえその誓いを破ることはできないのです。
カラヴァッジオ〈バッカス(ディオニュソス)〉ウフィツィ美術館
ディオニュソスの母セメレーの死
次に会う時、ゼウスは雷(いかづち)を持って現れました。とうぜん、人間のセメレーの体はたえきれず、燃えて死んでしまいました。
ゼウスは、すぐさまセメレーのお腹の子を救い出すと自分の腿(もも)に入れて育てることにしました。こうして、月日が満ちて生まれたのが、ディオニュソスです。
ディオニュソスは幼児から少年時代まで、ニューサのニンフたちに育てられました。彼女たちはこの功績によって、ゼウスによりヒアデス星団として星座に中におかれました。
酒の神ディオニュソス
ディオニソスは成長すると、ぶどうの栽培やその果汁から酒を造ることを発見しました。しかし、この頃になってもデウスの妃ヘーラーの憎しみは消えず、ディオニュソスを狂わせ、世界中を放浪させたのです。
ディオニュソスがプリギュア(トルコ)にきた時、女神レアーは彼の狂気を直し、秘教の祭礼を教えました。その後、再びディオニュソスはブドウの栽培と酒の作り方を教えて歩きます。
また、遠くインドにも長く遠征したということです。勝利して遠征から帰ってきたディオニュソスは、ギリシャ中に秘教を広めることにしました。そして、ディオニュソスは、母セメレーの故郷テーバイに戻ってきました。
しかし、狂気と陶酔のディオニュソスの祭礼を受け入れない君主ペンテウス王がいました。
【ヒアデス星団】
ヒアデス星団は、おうし座に位置しています。1等星アルデバランの近傍に広がるV字形の星の集団で、おうし座の顔の位置にあります。日本ではその形状から釣鐘星と呼ばれていました。距離は地球から150光年と考えられ、直径は30光年ほどと推定されています。
「スティクス河の誓い」は【パエトンの墜落】も参照