ペルセウスとアトラス
(更新日:2023.03.25)
エドワード・バーンズ・ジョーンズ〈石に変わるアトラス〉
メドゥーサを退治したペルセウス
メドゥーサを退治したペルセウス。ほっとし、風に流されるまま諸国を飛んでいました。リビアの上空にさしかかると、メドゥーサの血が滴り落ちて地面に染み込むと、そこからたくさんの蛇がわき出しました。それで、リビアは蛇が多い土地として有名になりました。
さらに、ペルセウスは飛んでいると、夕暮れになってしまいました。
「今夜はここらで、休もう」
彼は宿を求めて、地面におりました。ここはティターンのイアペトスの息子アトラスの領地。アトラスは、あのプロメテウスとエピメテウスの兄弟です。
アトラスの領地ヘスペリアは、一日の終わりに太陽神の馬車を水面で迎える「西の海」です。近隣に他国はなく、たくさんの牛と羊が大きな牧草地に飼われています。また、アトラスの領地には、あの黄金の林檎の果樹園(ヘーラーのヘスペリデスの園)もあります。
アトラスの館の扉を叩くペルセウス。
「どうか一夜の宿をお願いしたい。もし、あなたが私の家柄などを知りたいという慎重な方なら、わたしの父は大神ゼウス。また、もし武勲など尊ばれるお方なら、わたしはメドゥーサを退治してきた者です。けっして怪しい素性の者ではありません。どうか、今夜の宿をお願いできないでしょうか」
〈正義の女神テミス〉
女神テミスの神託
アトラスはかつて、正義の女神テミスから神託を受けていました。
「アトラスよ、おまえの木から黄金の輝きが奪われる日がくるだろう。それを奪いとるのはゼウスの息子だ」
そこで、アトラスは黄金の林檎の果樹園を巨大な竜ラードーンに守らせていたのです。
アトラスは神託を思い出し、警戒して横柄な態度をとりました。
「ここには近寄らぬことだ。ゼウスの息子だとか、メドゥーサを退治したとかは嘘に決まっている。近づくと命がないぞ!」
アトラスは言葉ばかりか、力ずくでもペルセウスを追い返そうとしました。
メドゥーサの首を取り出すペルセウス
ペルセウスは、力では到底アトラスにはかないません。さっと後ろをむくと、キビシスの袋からメドゥーサの首をとり出します。そして、アトラスにむけて
「一夜の宿を提供することで感謝されるのが嫌だというのなら、これをわたしの方から差し上げよう!」
たちまち、アトラスのひげと髪は木々となり、肩と手は尾根となり、体は大きな山になり、頭はその山頂となりました。さらに、その山は大きく広がり、全天空がアトラスの上に乗ってきました。こうして、アトラスは死んでも天空を支えているのです。
それがゼウスをはじめとした神々の思惑であったのは、言うまでもありません。
グエルチーノ〈天球を支えるアトラス〉