〈プシュケー第3の試練では冥界へ〉
第1の試練(神殿の穀物倉にて)
女神アフロディテによるプシュケーへの3つの試練が始まりました。
「それぞれを選り分けて、夕方までにそれぞれの山にしておくように」
そこには、小麦、大麦、えんどう豆などが、まじって大量にありました。
プシュケーはどうしたらいいかわからず、ただぼう然としました。そんなプシュケーを見て、エロスはこっそりアリの王とその家来にその仕事をさせました。
帰ってきた女神アフロディテは言いました。
「これは、あの子(エロス)がやったことだな。あの子にまでお前の仕事をさせるのか!」
第2の試練(羊毛がり)
「あの森の水辺にいる羊の毛を取ってきて、私に羊毛の見本として持ってくること」
プシュケーは川岸に向かいました。すると、河の神が言いました。
「陽の登っている午前中は、羊たちはとても警戒心が強いので、群れに近づいてはいけません。昼時になると、羊たちは木陰に入り、また河の精が羊たちの心をなだめてくれます。その時に川を渡りなさい。そして、ヤブや木立についた羊毛を集めるがよい」
プシュケーが羊毛を持っていくと、女神アフロディテは言いました。
「これもお前一人でやったことではないな。まだ、お前を認めるわけにはいかない」
第3の試練(冥界の女王の化粧品)
「冥界の女王ペルセポネから、肌のツヤが出る化粧品をもらってくること」
ここに至って、プシュケーはついに自分の死を覚悟しました。生きたまま冥界に入ることはできないからです。プシュケーは高い塔から身を投げ、死んで冥界へ行こうと決心しました。そして塔を登っていくと、声が聞こえてきました。
「哀れな不幸な娘よ、なぜそのような生涯の閉じ方をするのか?今までに奇跡的に助けられたことを忘れてはならない!」
それから、その声は冥界への道、冥界の番犬ケルベロスの脇を通り抜ける方法、冥界の渡し守カロンの説得の仕方まで教えてくれました。
最後に、こう忠告しました。「だが、女神の美の化粧品の箱を決して開けてはならないぞ!」
地獄の眠りが、プシュケーを包む
こうして、プシュケーは無事に冥界へ行き、女王から化粧品をもらって帰ってくることができました。危険な試練が終わったと思うと、彼女はほっとしました。心にスキが生まれた瞬間です。
「なぜ、試練を終えた私が、ほんの少しだけ化粧品をもらってはいけないのだろう? 愛する夫に化粧をして私を見てもらいたい!」
あの〈パンドラ〉のように、プシュケーは化粧品の箱を開けてしまったのでした。
すると、〈地獄の眠り〉がプシュケーを襲い、彼女は死んだように倒れてしまいました。これこそ、女神アフロディテが仕組んだ罠でした。それを察知したエロスは、プシュケーの元に飛んで行き、〈地獄の眠り〉を箱に戻しました。
「またしても、お前は好奇心から身を滅ぼすところだった! だが、母の試練を全うするがよい。あとは私に任せなさい」
エロスとプシュケーの結婚
エロスは、大神ゼウスに二人の結婚をお願いに行きました。ゼウスは女神アフロディテを説き伏せます。とうとう、女神も「3つの試練」に対するプシュケーのひたむきさに、許しを与えることにしました。
そして、結婚式の当日。
ヘルメスがエロスとプシュケーをゼウスの前に導いていくと、ゼウスはプシュケーにアンブロシアを飲ませ、彼女を不死にし、神々の仲間にしました。こうして、ふたりはめでたく永遠の夫婦となったのです。
※プシュケーとは「魂」を意味します。彼女はエロス(愛)との間に「喜び」と「若さ」の双子をもうけることになります。また、サナギから蝶が生まれ、体から魂が抜け出すことから、プシュケーは「蝶」にもたとえられます。そこから、絵画では彼女のそばに「蝶」が描かれるようになったのです。
→【パンドラの箱】意味するものは? 諸悪の根源 or 希望!
〈エロスとプシュケーの結婚〉