〈エーオースとティトノス〉
エーオースはアポローンの前を行く曙の女神
夜明けに太陽神アポローンの馬車の前を行くのは、金色の馬車に乗った曙の女神エーオース(アウローラorオーロラ)。夜の闇を払い、夜明けを告げるのが女神の仕事です。
曙(あけぼの)の名から清く正しいイメージがありますが、じつは地上に美青年を見つけるやいなや連れ去ってしまうという、じつは恋多き奔放な女神なのです。
というのも、エーオースは愛の女神アフロディーテの愛人である軍神アレースと一夜をともにしたからです。怒ったアフロディーテは、彼女を年がら年中人間に恋をするようにしてしまったのです。
ある日、エーオースは、トロイア王プリアモスの弟で美青年ティトノスを連れ去りました。しかし、ティトノスは人間、神に比べれば寿命は短くはかないものです。
モーガン〈エーオース〉
エーオース「ティトノスと永遠に一緒に」
エーオースはゼウスにお願いして、ティトノスを〈不死〉にしてもらいました。やがて、エマティオンとメムノンという二人の息子が生まれ、二人は幸せに暮らしていました。
エマティオンはヘラクレスに殺されました。メムノンはエチオピアの王になり、トロイア戦争に参戦。かなりの英雄でしたが、アキレウスに殺されました。息子を忘れられない母親エーオースが流す涙が、今でも朝露の玉になって草の葉に宿っているということです。
ティトノスは〈不死〉になっても〈不老〉ではなかった!
ティトノスは〈不死〉であっても、どんどん老けてしまいました。
エーオースは老いていくティトノスを見るに耐えられなくなり、王宮の一室に閉じ込めます。月日が経ち、彼はひからびて小さくなり、手足も動かなくなりました。そして、とうとうか細い声しか出せなくなってしまったのです。
エーオースはティトノスに見切りをつけ、彼をセミに変えてしまいました。
〈エーオースは息子メムノンを抱き上げる〉