ド・トロワ〈金羊毛の獲得〉
コルキス王アイエーテースのたくらみ
コルキスに着いたイアソーンたちは、コルキス王の宮殿を訪ねました。
イアソーンはアイエーテース王に挨拶をし、来意を告げました。
「夢枕に立って、プリクソスが告げるのです。金羊毛を故郷に持ち帰ってくれ」と。
アイエーテース王は答えました。
「プリクソス様の意志ならば、そうしよう。だが、返すかわりに、野にいる暴れ牛をなだめてほしい。鋤(すき)をつけ、畑を耕し、種まきをお願いしたい。しかる後に、金羊毛のありかをお教えしよう」
イアソーンに一目惚れしたメーデイア姫
その日の夜、王は宴会を開き、アルゴー船の乗員をもてなしました。
その時、宴会を覗いていたメーデイア姫は、イアソーンに一目惚れしてしまいました。また、父が頼んだことを聞いて、その策略に気付き悲しくもなりました。
〈あの牛はなだめられない、イアソーン様は殺されてしまう。私が助けてあげよう〉
彼女は優秀な魔女だったので、助ける方法も知っていたのです。その夜、彼女はイアソーンのもとに、自分で調合した秘薬を持っていきました。
「実は、あの牛は神ヘーパイストスが作りました。鋼鉄の足を持ち、口から炎を吐きます。この薬を体中に塗ってください。焼かれずにすみます。また、種は竜の歯です。まけば、兵士が生えてきて、あなたを襲います。その時は彼らの間に石を投げてください」
「どうして、私を助けてくださるのでしょうか?」
「あなたのことを愛して...しまったから」
「では、私も姫に感謝し、永久の愛を誓いましょう」
ド・トロワ〈メーデイアに永遠の愛を誓うイアソン〉
「イアソーンは焼き殺されてしまうぞ!」
次の日、コルキス中の人々が見にきていました。みんな、どうなるか知っているのです。
「まさか、こんな炎を吐く獰猛な牛とは! これでは、イアソーンはすぐに焼き殺されてしまうぞ!」ギリシャ勢は心配しました。しかし、イアソーンはメーデイアの薬を体中に塗っているので、平気な顔をしています。
炎を吐く牛はイアソーンを見ると、勢いよく突進してきました。
しかし、イアソーンがさっとツノをつかむと、すぐに牛は大人しくなりました。ここにも女神ヘーラーの助けがあったのかも知れません。なんといっても、ヘーラーはヘーパイストスの母です。
竜の歯
イアソーンは、やすやすと牛に鋤をつけ畑を耕すと、竜の歯をまきました。すると、鎧を着たたくさんの兵士が生えてきて、イアソーンに向かってきます。
「イアソーンが殺されてしまう!」ギリシャ勢は武器を持って駆けつけようとしました。アイエーテース王は、ほくそ笑んでいます。
その時です。イアソーンはメーデイアに教わったように彼らの中に石を投げ入れました。
「誰だ!石をなげたのは、お前か?」
「誰だ!石をなげたのは、お前か?」
「誰だ!石をなげたのは、お前か?」
兵士達は互いに言い合い、殺し合いが始まりました。
そして、最後に残った一人の兵士が、イアソーンに向かってきます。イアソーンは、簡単にこの兵士を倒してしまいます。
コルキス王のもくろみは外れ、仕方なくイアソーンに金羊毛の隠し場所を教えました。が、胸の中では、〈いまいましい、竜に食われてしまえ!〉と叫んでいたのです。
金羊毛の獲得と逃亡
その日の夜、イアソーンはアルゴナウタイにアルゴー船の出発の準備をするように言い、数人の兵士を連れて森の中に入っていきました。メーデイアも一緒です。
金羊毛のかかっている木の下に、恐ろしい竜がいます。これでは、金羊毛を取ることはできません。すると、メーデイアが竜に近づき、頭をなでると、竜は大人しくなりました。薬を飲ませると、竜はうとうとしはじめ、ついに眠ってしまいました。
こうして、イアソーンは金羊毛を手にすることができたのです。急いでアルゴー船に戻り出発しました。コルキス王が、みすみす金羊毛を手放すはずがないからです。
→アルゴー船の大冒険[4]イアソーンとメーデイアの逃亡と最後