〈『神曲』地獄のミノス王〉
ミノス王とミノタウロス
ゼウスとエウロペの子でクレタ島の王ミノス。妻は、怪物ミノタウロスの母パシパエ。次のラダマンテュスとは兄弟です。
ミノス王には、非常に過酷なところがあります。アテナイで息子を殺されたといって、テセウスの父の国アテナイとメガラに大艦隊を率いてプレッシャーをかけます。その結果、アテナイからミノタウロスの生贄を送ることになりました。
また、ミノス王はクノッソスの都を創設し、エーゲ海を支配しました。ミノア文明という名称は、王名に由来しています。
楽園エリュシオンの長ラダマンテュス
ゼウスとエウロペの子で、正義の士として名高いラダマンテュス。クレタ島の王アステリオスに育てら、兄弟はミノスとサルペドン。サルペドンはトロイア戦争の時、トロイア側につき、アキレウスの盟友で部下のパトロクロスによって殺されました。
テーバイに亡命していたラダマンテュスは、アムピトリュオンが戦死した後、妻であったアルクメネ（ヘラクレスの母）と結婚しました。
エリュシオンは世界の西の果て、オケアノス河の近くにある、気候温暖で芳香に満ちた島とされています。死者ではなく、生きたまま神によって運ばれるとも考えられています。
別説では、エリュシオンは冥界の中にあるという説もあります。日本の地獄は冥界、天国はエリュシオン（楽園）にあたります。
〈エリュシオンの野とラダマンテュス〉
アイアコスとアリ人間
アイアコスはゼウスと河の神アソポスの娘アイギナの子。不倫に怒るゼウスの妃ヘラの怒りのため、オイノネ島（後にアイギナ島）の住民が疫病のためほとんど死んでしまいます。
毎日、アイアコスは父ゼウスに住民を増やしてくれるよう祈っていました。そんな彼の夢の中で、多くのアリが群れをなして神木から下りてきました。
その朝、アイアコスは息子テラモンから多くの人々が集まってきたと告げられます。アリ人間（ミュルミドン）と呼ばれる人々です。同じ顔と同じ体つきをしています。
ミュルミドンはアリの名の通り、倹約家で辛抱強く、戦いにも優れていました。アイアコスの友人アキレウスの父ペーレウスが、ミュルミドンの一群を借り受けます。彼らはトロイア戦争の時、アキレウスの部下となって勇敢に戦います。
ゼウスはアイアコスを可愛がり、不老にしようとしましたが運命の女神が許しませんでした。その代わりに、死んでから冥界の3人の裁判官の一人になったのです。
敬虔なアイアコスは冥界の法を定め、死後の世界でも尊敬され、冥府の鍵を預けられているといいます。
※ミュルミドンの複数形＝ミュルミドネス
オウィディウス『変身物語』挿絵〈アイアコスとアリ人間〉
