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神々の饗宴プーレンブルフ〈神々の饗宴〉

あらすじ

オリュンポスでは神々が宴を開きながらトロイア戦争を見下ろしていました。

ゼウスは戦争を終わらせるか続けるかを神々に問いかけますが、トロイアを憎むヘラは強く反対します。

そこでゼウスはアテナを地上へ送り、トロイア側に誓約を破らせて戦争を再開させることにしました。アテナはトロイア軍の弓の名手パンダロスをそそのかし、メネラオスに矢を射かけさせます。

矢は女神の力で急所を外れましたが、メネラオスの脇腹を傷つけました。ギリシャ軍は激怒し、名医マカオンが呼ばれます。

こうして両軍の誓約は破られ、トロイア戦争は再び激しい戦いへと突入していくのです。

ゼウスの提案――戦争を終わらせるか、それとも続けるか

オリュンポスでは神々がトロイアを見下ろしながら宴を開いていました。神々にネクタルを注いで回っているのは、ゼウスとヘラの娘である青春の女神ヘベです。

そのとき、神々の王ゼウスが口を開きました。

「ギリシャのメネラオスには二人の神がついている。アテナとヘラ、お前たちだ。一方、パリスにはアフロディテが味方している。そして今しがた、死を覚悟したパリスを助け出したところだ。勝利は明らかにメネラオスである。さて、このまま戦争を終わらせて両軍に和平をもたらすか、それとも再び戦わせるか、我らは決めねばならぬ」

ゼウスは表面では穏やかに語りましたが、心の中ではこう思っていました。

(ヘラよ、お前はトロイアを滅ぼしたいのだろう)

ゼウスとヘラの娘へべデュ・ボワ〈ゼウスとヘラの娘へべ〉

ヘラの怒り――トロイアを許さぬ女神

トロイアに深い憎しみを抱くヘラとアテナは、しばらく黙り込んでいました。しかし、ついにヘラが怒りを抑えきれずに言い出します。

「あなた、何をおっしゃるのです。私のこれまでの苦労を無駄になさるのですか。私は馬も軍勢も集めさせ、トロイアに報いを受けさせるために尽くしてきました」

ゼウスは静かに答えました。

「ヘラよ、そなたはトロイアを滅ぼしたいと望んでおる。しかし彼らがどれほどの悪事を犯したというのだ。わしはプリアモス王とトロイアの民を大切にしている。まあ、好きにするがよい。わしはそなたと争いたくはない。

だが、ひとつ覚えておけ。いつか、わしがそなたの愛する人間たちの国を滅ぼしたいと望んだときは、わしの思うままにさせてもらう。今回はそなたの願いを聞くのだからな」

ヘラは答えました。

「私の愛するアルゴス、スパルタ、ミュケネを憎いと思われるなら、どうぞ滅ぼしてください。あなたは私よりはるかに強いお方ですもの。

しかし今回は、私の努力を無駄になさっては困ります。アテナを地上に送り、トロイア側から誓約を破らせ、ギリシャ軍へ攻撃を仕掛けさせてください」

ゼウスはうなずき、アテナに命じました。

「アテナよ。トロイア側が誓約を破り、ギリシャ軍に攻撃を仕掛けるよう手配せよ」

アテナの策略――誓約を破らせる女神

ゼウスの命を受けたアテナは、ただちにオリュンポスから地上へ降り立ちました。ゼウスは戦争再開の合図として、天空に雷鳴を轟かせます。

アテナはトロイアの武将ラオドコスの姿に変わり、弓の名手パンダロスに近づいて言いました。

「勇気を出してメネラオスに矢を射かけてみよ。そうすればトロイア軍すべてがそなたを称えるであろう。とりわけ、あのメネラオスに敗れかけたパリス様からはな」

女神にそそのかされたパンダロスは、野山羊の角から作った弓を取り出しました。部下たちは盾を並べ、パンダロスを隠します。

彼は新しい矢を取り出し、太陽神アポロンに祈りました。

「成功した暁には、立派ないけにえを捧げます」

そして弓を引き絞り、矢を放ちました。

メネラオス射られる――誓約破りの一矢

メネラオス像ブロージ〈メネラオス像〉

しかしアテナはメネラオスの前に立ち、矢をわずかに逸らしました。それでも矢はメネラオスの脇腹をかすめ、黒い血が地面にしたたり落ちます。

メネラオスは一瞬身震いしましたが、傷が深くないことが分かると勇気を取り戻しました。

そばにいたアガメムノンは青ざめながら言います。

「メネラオスよ、国と国との争いなのに、そなた一人を代表として決闘に向かわせてしまった。すまぬ。トロイア側は誓約を破り、ギリシャの代表であるそなたを狙ったのだ。

しかし神々に捧げた誓約が無駄になることはない。ゼウスはこの裏切りに怒り、必ずトロイアを滅ぼすであろう」

メネラオスは答えました。

「兄者、矢は急所を外れた。ご心配には及ばぬ」

しかしアガメムノンは側近に命じます。

「タルテュビオスよ、すぐにマカオンを呼べ。名医アスクレピオスの子だ」

伝令はただちに走りました。

「アスクレピオスの御子よ、アガメムノン王がお呼びです。勇士メネラオスが矢に射られました」

その間にもトロイア軍は盾を構え、戦列を整え、再びギリシャ軍へ攻め寄せてきました。

誓約は破られ、戦争は再び燃え上がろうとしていたのです。