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ラオコーン〈トロイアの運命〉〈ラオコーン〉ヴァチカン美術館

トロイアの木馬

トロイア戦争末期、英雄ヘクトルが死んだ後も、ギリシャ軍は武力により勝利を手にすることができずにいました。なかば諦めかけてもいました。そこで、智将オデュッセウスが策を練りました。

まず、ギリシャ軍は撤退の準備を始め、船団の一部を島かげに隠しました。その後、大きな木馬を作り、女神アテナへの捧げものとして置いていったのです。残ったギリシャの軍団もこれで最後といったよそおいで出帆して去りました。

次の日、城壁の上からギリシャ軍のいる浜辺を眺めたトロイアの見張り。ギリシャ軍の船を一隻も見ることはありません。

「ギリシャ軍がいないぞ! 我々は勝利したのだ!」
「お〜い、みんな、ギリシャ軍が一人もいないぞ! 撤退したのだ」

城壁の中から外に出てきた半信半疑のトロイアの人々。ギリシャ軍の陣地までやってくると驚きました。
「何なんだ!この大きな木馬は?」

「これは、我々の戦利品だ! 街にもって帰ろう!」
「いや、これはギリシャ軍のワナかもしれぬ、そばに近づかないことだ!」

意見は、真っ二つに分かれました。

神官ラオコーンの忠告

そこへ、ポセイドンの神官ラオコーンと息子がやってきて叫びました。
「街に運ぶなど狂気の沙汰だ! ギリシャ軍の悪巧みが分からないのか! 普段ギリシャ人が贈り物をしてくれる時ですら、私は彼らを恐れるくらいだ」

そう叫びながら、手に槍を持つと木馬の横腹に投げつけました。

ドス! ヒェー!

それは人の呻き声にも似ていました。が、ほとんどの人々が気付くことはありませんでした。ここで、ラオコーンの忠告を聞いて木馬の中を確かめていれば、トロイアの滅亡は避けられたのです。

捕われたギリシャ人シノーンの告白

ちょうどその時、街の人々が恐ろしさに口も聞けないギリシャ人を引っ立ててきました。
「何でも正直に答えろ、命だけは助けてやろう」

トロイアの武将は、約束しました。男はシノーンと名のり、語りはじめました。
「自分はオデュッセウスの怒りを買い、置き去りにされました。木馬は女神アテナヘの捧げものです。大きくしたのは城壁の中に運び込めないようにしたからです。

予言者カルカースが、『もし、木馬をトロイア人が城壁内に入れたなら、ギリシャ軍は敗走するだろう』と、言ったからです」

この言葉が、トロイアの人々の心を一変させました。どのようにこの大きな木馬を運び、縁起の良い予言を実現させるにはどうしたらよいか、みんながみんな考えはじめていました。

そんなトロイアの人々を眺め不安になったラオコーン。もう一度、大声を出して説得しようとしました。その時です、二匹の大きな海蛇があらわれたのです。

ラオコーン親子に襲いかかる二匹の海蛇

トロイアの人々は四方八方へ逃げ出しました。二匹の海蛇は最初ラオコーンの二人の息子を襲い、助けようとしたラオコーンにも巻きつきました。ラオコーンは締め付けられ、一瞬気を失いかけました。

しかし、息子ヘの思いで気を取り戻します。しかし、もはや助けることも、動くこともできません。
「あの木馬に...槍を投げつけたばかりに、女神アテナの怒りを買ってしまったのか!」

ラオコーンは力つきて、二人の息子ともども海蛇に絞め殺されてしまいました。今やラオコーンの忠告は完全に無視され、トロイアの人々は木馬を街に運び始めました。

トロイアの運命が決まった瞬間です。

ラオコーングレコ〈ラオコーン〉