※本ページにはプロモーションが含まれています。

ギュスターヴ・モロー「キマイラ」モロー〈キマイラ〉

キマイラは、ライオンの頭、山羊の胴体、蛇の尻尾

ギリシャ神話最強の怪物テュポンとエキドナの娘。リュキアに住み、カーリア王アミソダレースに育てられました。

強靭な肉体を持ち、口からは火炎を吐き、人や家畜を食べます。その火炎によってしばしば山をも燃え上がらせていました。

もとはヒッタイトで神聖視された季節を表す聖獣で、ライオンが春、山羊が夏、蛇が冬を象徴。

ベレロポンのキマイラ退治

ペガソスにまたがったベレロポンはキマイラのいる山の洞窟へ向かい、キマイラが洞窟から出てきたところをすかさず空から攻撃しました。

まず鉛を口に放りこみ、火炎を吐けなくし、槍でその頭を刺し貫きました。

ドラクロア「ペレロポンに退治されるキマイラ」ドラクロア〈キペレロポンに退治されるキマイラ〉

キマイラの意味や象徴

中世のキリスト教では、主に「淫欲」や「悪魔」といった意味で描かれました。
12世紀の詩人マルボートによれば、様々な生物の要素を併せ持つ事から女性を表すとされています。

ライオンの頭は「恋愛における相手への強い衝動」
山羊の胴体は「速やかな恋の成就」
蛇の尻尾は「失望や悔恨」をそれぞれ表すとされています。

怪物キマイラは生物学の「キメラ」の語源

「異質なものの合成」という意味から「キメラ細胞」「キメラ生物」などの用語がつくられました。

キメラは蛇の胴に鳥の頭部と翼を持った姿で描かれていたり、キメラの派生であるキメイラは普段のキメラの体に鶏のトサカを持ったりした姿で描かれているそうです。

モロー自身のコメント

私はこの作品の中で、趣味や気まぐれ、情熱といったものを、それぞれ違った感情に対応するいくつかのグループに分けて、擬人化し、表現した。

例を挙げるならば、たとえば「トンボ」と呼ばれる水に関わりのある昆虫に体を支えられている人物像があるが、それは風に運ばれることだけを夢みる、軽く、空気のように繊細な性質を表現したものだ。

猛り狂うキマイラに運ばれる情熱的な性質を、私は描くだろう。他のあるものは、それぞれが抱えるキマイラにさいなまれることになる。それは身を滅ぼす晴熱の象徴だ。またあるものは、虚空に投げ出され、けっして捉えることのできないキマイラを追いかけるだろう。

まるで、それは哲学書の一頁のようになるだろう。そして、そこには、詩人が導くようなしかたで、そこばくの方向性が加えられるだろう。頂上には、祈りと聖なる思索がもつ純粋な魂の高揚がある。祈りによる諸宗教の交差。

この作品は悪魔的な一枚の「デカメロン」だ。そこには、古代以来、中世を通ってルネサンスに至るまでの、〈それは人間の持つ三つの側面を混合させることになったのだと思う〉女性が持っている悪魔的な側面という観点から捉えられた女の夢想のあらゆるニユアンスが表現されている。

ベレロポン、ペガソスに乗って天翔る!

キマイラ
〈キマイラ〉