天界の戦いよりアテーナ〈天界の戦いよりアテーナ〉

オデュッセイア【第1歌】前編:オリュンポスにて、アテナの訴え

オデュッセイア 第1歌 前編
魔女キルケは、忠告しました。
けっして陽の神エエリオス・ヒュペリオンの牛を食ってはならない

しかし、オデュッセウスが探検に出かけているすきに、空腹のためにその禁を破ってしまった家来たち。エエリオスがゼウスに訴えます。ゼウスは承諾し海を荒らし、オデュッセウスは海難で家来を全て失います。

そして、彼が漂流後にたどりついたのが、仙女カリュプソのオギュギエ島。オデュッセウスは、ここに7年間住んでいます。仙女との間に子供もふたり生まれています。トロイア戦争に出征してから20年もたっていました。

アガメムノンの息子オレステスの復讐

ギリシャの総大将アガメムノンはトロイア戦争からアルゴスに帰郷した日、自分の館で妻クリュタイメストラと姦夫アイギストスに殺されてしまいます。妻と姦夫の二人は、その後7年間アルゴスを統治していました。しかし、アガメムノンの息子オレステスが母クリュタイメストラと姦夫アイギストスに復讐しました。そんなオレステスへの賞賛がギリシャ中に広まっていた頃……

ポセイドンはエチオピアを訪れていて、オリュンポスに今は不在です。

ゼウスがアガメムノンの例を取り上げ、人間を怒ります。
「いやはや人間どもが神々に罪を着せるとは、なんたることか。自らの非道な振る舞いによって、運命を超えて受けなくてもよい苦難を招いておるのだ。アイギストスにはヘルメスによって伝えておいたはず。『けっしてアガメムノンを殺害し、その妻クリュタイメストラを奪ってはならぬ。オレステスに報復されるとな』その通りの罪業の報いを受けた」

オリュンポスの神々の会議にて、女神アテナの訴え

オデュッセウスの擁護神アテナが答えます。
「まことに、アイギストスは当然の報いを受けました。それはそれで、私はオデュッセウスのことを思うと、胸が痛みます。仙女カリュプソは、オデュッセウスを惑わし故郷を忘れさせようとしています。オデュッセウスは故郷への思いから死さえ望んでいます。オリュンポスの大神よ、あなたの御心は動きませぬか。オデュッセウスはトロイアの地でもあなたに供物を捧げていました」

不在のポセイドンを気にしつつ、ゼウスが答えます。
「困ったことにポセイドンが怒りをおさめぬのだ。オデュッセウスに息子ポリュペモス(一つ目巨人キュプロプス)の目をつぶされたからだ。しかし、ポセイドンがオデュッセウスを殺すことはない。故国を遠く放浪させているだけだ。今こそ、オデュッセウスをどうするか協議しようではないか。ポセイドンもたった一人で我らに反対して争うことはしまい」

オデュッセウスの屋敷に向かう女神アテナ

「オデュッセウスの帰還が了承されるようであれば、早速ヘルメースをオギュギエ島に遣わして、仙女カリュプソに神々の決議を伝えさせようではありませんか。私はイタケへ行きます。驕慢な求婚者たちに毅然と接するよう、オデュッセウスの息子テレマコスの胸に勇気を吹き込んでやりましょう。また、ネストールの住むピュロスやメネラオスの住むスパルタにも行くよう、助言してきます」

そう言うと、女神アテナはサンダルをはき、手には槍を持ってオリュンポスを下っていきました。
オデュッセウスの屋敷では、驕慢な求婚者たちが肉を食らい、卓上ゲームに興じています。客人としてタポスのメンテスに姿を変えた女神アテナは、そんな求婚者に憤りを感じます。そんな客人メンテスにいち早く気付いたのはテレマコス。騒々しい求婚者の声や姿が見えない場所に客人を招き入れました。