〈アフロディーテ(ビーナス)の浮気発覚!〉
美女と野獣のアフロディーテとヘーパイストス
女神の中でも最も美しいアフロディーテ(ビーナス)、その夫は神々の中でも最も醜い鍛冶の神ヘーパイストス。「美女と野獣」の代表的な組み合わせです。
もともと恋の女神アフロディーテです。今回の相手はゼウスの子で軍神のアレース(ローマ神話:マルス)。アレースは、同じ戦いの女神アテーナとよく比べられます。
アテーナは守る戦い、アレースは攻める戦い。また、アレースは乱暴者だったので人気はなかったのですが、イケメン神です。
ヘーパイストスの透明な鎖のワナ
ある日、たびたび天空からアフロディーテと軍神アレースの不義を見ていた太陽神ヘリオス。ついにいたたまれずアフロディーテの密会のことを夫ヘーパイストスに告げ口しました。
ヘーパイストスは憤慨しましたが、すぐに妻アフロディーテに釈明を求めません。
彼はその醜さからは想像もできないほどの我慢強さを持った冷静な技術者でもあったのです。ベッドの上に透明な鎖を張りめぐらした精巧なワナをしかけたのです。
いつものように夫ヘーパイストスが出かけると、妻アフロディーテは軍神アレースを招き入れました。その途端、精巧なワナが動きだし、二人は身動きがとれなくなりました。
アフロディーテ「なによ、これ!」
アレース「やられた!バレていたのだ......」
抱き合った二人はどうすることもできません。そのままヘーパイストスが帰ってくるのを待つほかはありません。
帰ってきたヘーパイストスは怒りに震えましたが、オリュンポスの神々を大声で呼び集めました。妻の裸を見られることもいとわず、二人を晒し者にしたのです。冷酷です。
ウテワール〈アフロディーテの浮気を発見するヘーパイストス〉
うらやましがったアポローン
この時、集まってきた神々の一人アポローンがヘルメースにささやきました。「アフロディーテを抱けるなら、どんな恥ずかしい姿を晒してもかまわないと思わないか」
ヘルメースはそれに答えて「それができたらどんなによかろう。この三倍の鎖でぐるぐる巻きにされて、神々に見られても構わぬ」
集まった神々は、みな大笑いしていました。
しかし、海の神ポセイドーンだけは笑わず、ヘーパイストスに耳打ちします。
「放してやれ、アレースにはそなたの要求する通りの償いをさせる、私が約束する」
ヘーパイストスが鎖を緩めると、アフロディーテとアレースは、それぞれ自分の神殿に逃げるように飛び去って行きました。
鬱憤をはらしたヘーパイストス。ですが、アフロディーテを離縁することはありませんでした。その後、アフロディーテの浮気がおさまったかどうかは...神のみぞ知る?
ちなみにアフロディーテの恋のお相手は多くいますが、有名なのはこの軍神アレース、若きつばめアドニス、トロイアの武将アンキーセース(アイネイアースの父)です。