〈アテナ:天界の戦いより〉
魔女キルケの警告にもかかわらず、オデュッセウスの家来たちは太陽神ヘリオスの牛を食べてしまい、その結果、ゼウスの怒りによって全滅しました。
その後、漂流したオデュッセウスは仙女カリュプソの島にたどり着き、7年間過ごします。
ゼウスは人間の非道(アガメムノンが妻とその愛人に殺され、息子オレステスが復讐)を嘆きつつ、アテナの訴えにより、オデュッセウスの帰還について議論します。
女神アテナはヘルメスを遣わし、オデュッセウスの帰還をカリュプソに伝えるよう手配し、息子テレマコスに勇気を与えるためイタケに向かいます。
オデュッセウス、家来を全て失う
魔女キルケはオデュッセウスと家来に警告しました。
「決して陽の神ヒュペリオンの牛を食べてはならない」
しかし、オデュッセウスが探検に出かけている隙に、家来たちは空腹のためにその禁を破ってしまいました。
エリオスはゼウスに訴えると、承諾したゼウスは海を荒らし、オデュッセウスは家来たちを全て失ってしまいました。
そして、オデュッセウスが漂流後にたどりついたのが、仙女カリュプソのオギュギア島です。
オデュッセウスはオギュギア島に7年間住むことになり、カリュプソとの間に子供も二人生まれました。
トロイア戦争に出征してから20年間もたっていました。
アガメムノンの息子オレステスの復讐
ギリシャの総大将アガメムノンはトロイア戦争からアルゴスに帰郷した日、自分の館で妻クリュタイムネストラと姦夫アイギストスに殺されてしまいます。
妻と姦夫の二人は、その後7年間アルゴスを統治していました。
しかし、アガメムノンの息子オレステスが母クリュタイムネストラと姦夫アイギストスに復讐しました。
そんなオレステスへの賞賛がギリシャ中に広まっていた頃、ゼウスがアガメムノンの例を取り上げ、人間に怒ります。
「いやはや人間どもが神々に罪を着せるとは、なんたることか。自らの非道な振る舞いによって、受けなくてもよい苦難を招いておるのだ。
アイギストスにはヘルメスによって伝えておいたはず。
『けっしてアガメムノンを殺害し、その妻クリュタイムネストラを奪ってはならぬ。オレステスに報復されるとな』。
その通りの罪業の報いを受けたのだ」
オリュンポスの会議で、女神アテナは訴える!
ある日のオリュンポスでの会議に、ポセイドンはエチオピアを訪れていて欠席していました。
そこで、オデュッセウスを擁護しているアテナが訴えます。
「まことに、アイギストスは当然の報いを受けました。
それはそれで、私はオデュッセウスのことを思うと、胸が痛みます。
仙女カリュプソはオデュッセウスを惑わし、故郷を忘れさせようとしています。
オデュッセウスは故郷への思いから、死さえ望んでいます。
オリュンポスの大神よ、あなたの御心は動きませぬか。オデュッセウスは、トロイアの地でもあなたに供物を捧げていました」
不在のポセイドンを気にしつつ、ゼウスが答えます。
「困ったことに、ポセイドンが怒りをおさめぬのだ。
オデュッセウスに息子ポリュペモス(一つ目巨人キュクロプス)の目をつぶされたからだ。しかし、ポセイドンがオデュッセウスを殺すことはない。故国を遠く放浪させているだけだ。
今こそ、オデュッセウスをどうするか協議しようではないか。ポセイドンもたった一人で我らに反対して争うことはしないだろう」
オデュッセウスの屋敷に向かう女神アテナ
女神アテナは語ります。
「オデュッセウスの帰還が了承されるようであれば、早速ヘルメスをオギュギア島に遣わして、仙女カリュプソに神々の決議を伝えさせようではありませんか。
私はイタケへ行きます。驕慢な求婚者たちに毅然と接するよう、オデュッセウスの息子テレマコスの胸に勇気を吹き込んでやりましょう。また、ネストルの住むピュロスやメネラオスの住むスパルタにも行って、助言してきます」
そう言うと、女神アテナはサンダルをはき、手には槍を持ってオリュンポスを下っていきました。
オデュッセウスの屋敷では、驕慢な求婚者たちが肉を食らい、卓上ゲームに興じています。
客人としてタポスのメンテスに姿を変えた女神アテナは、そんな求婚者に憤りを感じます。
そんな客人メンテス(アテナ)にいち早く気付いたのはテレマコス。騒々しい求婚者の声や姿が見えない場所に、客人を招き入れました。