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アートバイブル 1話5分で読める聖書
井の頭公園
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1話5分で読めるギリシャ神話

ギリシャ神話の神・女神・英雄のエピソードを絵画から分かりやすくまとめています。ギリシャ神話は美術を鑑賞する時、必ずあなたの役に立ち想像力を羽ばたかせてくれます。

アガメムノン 後編

躊躇するクリュタイメストラ
ピエール=ナルシス・ゲラン〈躊躇するクリュタイメストラ〉

〔館の中から〕
アガメムノン
「ううむ、切りつけおったな、急所の深く...」
コロス
「静かに。誰か手傷を受けたと叫んでいる」
アガメムノン
「ううむ、またもやられた、二度までひどく」
コロスの長
「殿のあの叫びでは、企みが果たされたらしいぞ。どうしたものか皆の衆、思案を」
コロス
「市民が助けにくるよう触れ回ったらどうか」
「今すぐ中に入って、証拠をおさえよう」
「これを手始めに、奥方は市に圧政をしくつもりだ」
「文句を言うても、殿は生き返らぬからな」
「いや、とても我慢がならぬ、死んだ方がましだ、圧政よりは」

アガメムノンの殺害
〈アガメムノンの殺害〉
〔長老たちが評議していると、門が開き、クリュタイメストラが現れる、足元に血に染まった衣の中にアガメムノンとカサンドラーが倒れている〕

コロス
「奥方はなんという悪いことを。国からは追われましょうぞ」
クリュタイメストラ
「私は分かる人々だけに話します。トロイア戦争の時、自分の娘を、この私の腹を痛めた、何よりも可愛い子を、アウリスの港で贄に捧げられたとき、この人こそ、追放するはずだったのではないの、神への冒瀆の償いとして。
娘にための正義にかけても、驕慢を戒めるアテー女神と復讐の女神らにかけて、私はこの人を生け贄として殺したのです。また、何人もこの館へは足を踏み入れはさせません。この館の竃(かまど)の火を新たな主アイギスト様がお点しなさるあいだは」

〔アイギストス、手下を従えて登場〕
アイギストス
「ああ、正義をもたらすきょうの日の、ありがたい光明よ。とうとう、アガメムノンの父アトレウスが、私の父チュエステースを追放した後に、和解と偽り、二人の子の肉切れを食べさせた企み、その時三人目の子であり産着にくるまれた私をも追放した償いをする羽目になった。されば、私は正義によるこの男の抹殺の計画者なのだ」
コロス
「アイギストス殿、不幸のさなかで驕るというのはよくないことだ。自らすすんで、この方を殺したと言われるのか。いずれ裁きを受け、市民の呪いを受け、石子詰の刑にされるに違いないぞ」
アイギストス
「お前らは、船をこぐ舟子たちの、下の段についていながら、上座の座にいて船を支配する者にむかい、そのようなことを言うのか、老人の身で」
コロス
「それなら、あなたはこのアルゴスの僭主になろうというのか。アガメムノンの子オレステス様がこの国に帰ってこられ、奥方共々おぬしを殺してくださるように」
アイギストス
「そのようなことを言ったりするなら、目にものを見せてやろう。よいか、仲間の者ども刀を構えよ。死も厭うまいぞ」
コロス
「こちらも、一身の死を持って、刀を構えようぞ」

〔クリュタイメストラ、両陣営の間に入りなだめる〕
クリュタイメストラ
「とんでもないこと、ねえ、愛しい方、この上禍いを重ねようとは。双方、たくさんの犠牲者が出てしまいます。
さあ、長老の方々、お帰りなさいませ、ひどい目にあわないうちに」
アイギストス
「正しい分別を失い、支配者に侮辱をくわえるものではないか」
コロス
「このアルゴスには、悪人に尾を振るようなものは一人もいないぞ」
アイギストス
「後日、おまえら皆、思い知らせてくれようぞ」
コロス
「せいぜい威張りちらすがいいぞ、雌鳥のそばの雄鶏みたいに」

〔クリュタイメストラ、アイギストスに〕
クリュタイメストラ
「あんなやくたいもない遠吠えを気にかけてはいけませぬ。今は、私と愛しいあなたが館の主、アルゴスの領主として統治すればよいのですから」

オレステイア三部作第2作:供養する女たち 前編