1話5分で読めるギリシャ神話

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供養する女たち 中編

オレステスの母親とアイギスト殺し
ディーノメイ〈オレステス、母親とアイギストを殺す〉

〔アルゴス城門の前、オレステスとピュラデス、従者を連れて登場。城門の戸を激しく叩く〕
オレステス
「だれか、番人はいないか。」
番人
「客人はどちらのお方。どこからおいでで?」
オレステス
「この館のご主人に伝えてくれ、その方々へ変わった知らせを持ってきたのだ」

〔クリュタイメストラ、侍女を従え、門より登場〕
クリュタイメストラ
「お客様、何の御用でしょうか?この館にかなうなら、何なりお役に立てましょう。お宿を所望なら、ご期待にかないましょう。込み入ったお話なら、男(主人)が話を聞きましょう」
オレステス
「私たちはポーキスからまいりました。途中、見知らぬ者から、ことづてを頼まれました。『ポーキスのストロピオス様のお話で、オレステスはもう死んでしまったと伝えてくれ。実はこの青銅の壷に、その方の灰が入っているのだ』と。誰か、親御さんをご存じないでしょうか?」
クリュタイメストラ
「まぁ、なんということ!この館の呪いは抗いようがないもの。オレステスまで奪い取るとは!家の呪いを癒すただ一つの望みでしたのに」
オレステス
「どうやら、オレステス様とはこの館の方でしたか。私どもとしても、このような話をお伝えなければならないとは残念です」
クリュタイメストラ
「いたしかたございません。いずれ誰かがこの報せを持ってきたことでしょう。どうぞ、一日の旅の疲れをとっていってください」
〔召使いに案内されて、オレステスとピュラデス門の中に退場。同じくクリュタイメストラと侍女も退場〕

コロス〔王妃に仕える侍女たち〕
「いまこそ、まさに人をだます説得の女神が出かけていってくださる時、剣をとり倒しあう時、黄泉路のヘルメス様が案内をしてくださる時です。
〔館の中から、オレステスの乳母キリッサが出てくる〕
キリッサさん、悲しい顔してどこに行かれるのですか?」
乳母
「奥方様の言いつけで、事情を聞くようアイギスト様を迎えにね。奥方様、渋面を作っていらしたが、目の奥底では『してやったり』と笑っているのです。アイギスト様にしても、昔のことはさておき、うれしいに決まっている。
私としては、命をかけてお育てしたオレステス様が亡くなられた、こんな辛いことはありません」
コロス
「して、どんな支度をしてくるように言ってらしたの」
乳母
「それはどういう意味だね?」
コロス
「護衛隊といっしょにとか、お一人でとかです」
乳母
「槍を持った家来をつれてってお指図だわ」
コロス
「あの方たちをお恨みなら、それは止めてください。一人でいらっしゃるように、お勧めなさい。一刻も早く、吉報ですからって」
乳母
「あなた方は、あの報せに気を良くしているのかい!」
コロス
「とんでもない、でも、ゼウス様がこの災難の向きを変えてくださいますから」
乳母
「じゃ、なにか話と違ったことでも知っているのかえ?」
コロス
「まぁ、一人で来るように伝えてください」
乳母
「よく分からないが、そう言ってみるよ」〔退場〕

コロス
「オリュンポスなる神々の御父、ゼウス様、お叶えくださいませ、お家がしっかり立て直れるよう、ゼウス様、どうかお護りくださいませ。仇と向かって、あの方は館の中においでです」

〔アイギュストス、一人の小性とともに登場〕
アイギュストス
「他国から来た者が、変わった便りを持ってきたというが。ありがたくない報せで、オレステスが死んだそうだ。痛み切っているこの館は、血の出るような苦しみだろう。たんなる噂かどうか、教えてくれぬか?」
コロス
「私たちも伺いましたが、中にお入りになり、客人方から直にお訊きくださいませ」
アイギュストス
「もちろん、そのつもりだ。実際に自身の目で見たことなのか、評判にすぎないのか、万事を見通す私の心は、けっして欺きはできなかろうから」
〔アイギュストス、城門より中に入る〕

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