1話5分で読めるギリシャ神話

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第十一歌前編:総大将アガメムノン奮戦す!

争いの女神エリス
〈争いの女神エリス〉アキレウスの母テティスとペーレウスの結婚式の時、あのリンゴを投げ入れた女神

(イリアス 第十一歌 前編)

暁の女神エオスが起き上がると、ゼウスは争いの女神エリスをギリシャ軍に送った。女神は船陣の中央オデュッセウスの船の傍に立つと、

「休まず戦い、敵と刃を交えよ」

と大きな声で叫んだ。もはや、戦いから逃げ、故国に帰ろうとするギリシャ兵はいなかった。
総大将アガメムノンは武具を身につけると、出撃を命じた。アテネとヘレは王に敬意を示して、雷を鳴らす。

一方、トロイア軍はヘクトルを中心に、パリス、プリュダマス、アイネイアス、アゲノル、アカマスらが戦列を整えると、両軍は躍りかかって殺しあった。これに喜んだのは、争いの女神エリスのみ。他の神々はオリュンポスの館から静観していた。

アキレウスの母テティスとトロイア戦争】参照

総大将アガメムノン奮戦す!

中でも、アガメムノンは凄まじい戦いを演じ、トロイア王プリアモスの子イソスとアンティポスを倒した。さらに、ペイサンドロスとピッポロコンも倒した。この二人はオデュッセウスとメネラオスが使者としてトロイアに赴いた時、「二人を殺してしまえ。帰してはならぬ」と言ったアンティマコスの息子であり、アガメムノンはとりわけこの二人に憎悪を持っていた。

こうして、アガメムノンはヘクトルとトロイア軍を城壁まで押し戻していく。

虹の神イリス、ゼウスの思惑をヘクトルに伝える

この時、イデの山に座っていたゼウスは虹の神イリスを呼び、ヘクトルに伝えさせた。
「アガメムノンが暴れまわっている間は、兵士たちに戦わせ、自らは退いているように。そして、アガメムノンが傷つき戦車に乗り、船陣に向かったなら、その時こそ、ヘクトルよ、敵の船陣まで攻め入り、夜が訪れるまで敵を打つ力をおぬしに与える、とな」

アガメムノンはアンテノルの子イピダマス、コオンを倒していったが、ついにコオンに肘の下を槍で傷つけられた。しかし、血を流しながらも奮戦し続けた。やがて、血が乾き始めた頃、やっと痛みを覚え、戦車に飛び乗るや船陣を目指す。

アガメムノン、撤退する

この時を待っていたヘクトルは叫んで、
「諸君、今こそ武勇を示すことを心がけよ。ゼウスは、こよなき名誉を私に賜ったのだ」
彼の後ろには、ギリシャ兵の死骸がるいるいと築かれていった。

これを見ていたオデュッセウスは、ディオメデスに声をかけた。
「ディオメデスよ、私の傍らに立ってくれ。ヘクトルに船陣を占領されるようなことになったら恥辱だ」
「いかにも、わしはここでヘクトルを阻止する。しかし、そうしたからといって、ほんの少しの時間だ。ゼウスは、明らかにトロイアに力を貸している」

ディオメデス、負傷する

ディオメデスがヘクトルに接近し、投げた槍はアポロンが賜った兜に当たった。が、ヘクトルはしばし膝をついて気を失っていたが、すぐ立ち直り軍勢に紛れ込んで逃げた。
「またしても、アポロンに助けられたな。今度会えば、必ず仕留めてみせる」
と、ディオメデス。そんな彼に弓で狙いを定めたパリス。放たれた矢はディオメデスの右の足の甲を貫いた。

パリスは叫んだ。
「矢は無駄にならなかった。が、貴様の腹に当たればよかったものを」
「弓しか使えない女たらしめ、一騎打ちになれば、弓など使えないぞ。こんな弓の傷など、気にもならぬ。わしの槍はな、直ちに相手の息の根を止めてしまうのだ」
オデュッセウスが傷ついたディオメデスの前に立ち彼をかばうと、ディオメデスは矢を足から抜き、戦車で自陣に帰ってしまった。彼の傷はそれほどの深手であったのだ。

一人残されたオデュッセウスの運命は......

第十一歌後編:パトロクロスの運命の扉が開く!】へ続く

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