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ポセイドンの馬クレイン〈ポセイドンの馬〉

ゼウスに怒るポセイドンの暗躍

壮絶な戦いを繰り返しているギリシャ勢とトロイア軍。

この時、ゼウスはトラキアの島サモスの山頂に腰を下ろし、下界を見下ろし安心しています。もはや神々は誰も自分の命令に逆らわず、どちらかに味方することはあるまいと。

しかし、ポセイドンはゼウスに怒り、動き始めていました。予言者カルカスとなって、ギリシャ軍を鼓舞してまわっています。
「両アイアスよ、おぬしら二人であのヘクトルを船陣から撃退できよう」と言うと、杖で打って二人の全身に力をみなぎらせました。

大アイアス=サラミス王テラモンの子、小アイアス=ロクリス王オイレウスの子

小アイアスが大アイアスに言いました。
「テラモンの子アイアスよ、今、オリュンポスの神が姿を変えて、我らに命じたに違いない。あれは予言者カルカスではない。その身のこなしの速さといい、我らの力をみなぎらせてくれもした」

「いかにも、今のわしは力がみなぎり、ヘクトルと刃を交えたい気持ちでいっぱいだ」

また、ポセイドンは戦意喪失していたギリシャ勢を叱咤激励します。
「恥を知れ、若造どもが。苦しい戦いを恐れているなら、この日こそ我らギリシャ勢がトロイア軍に撃たれる日となろう。いくらアガメムノンとアキレウスの仲違いが原因で今の状態になっていようと、安閑としていることは許されぬ」

ゼウスを信じて、ヘクトル叫ぶ!

「ゼウスが私を奮起せしめられたのであれば、ギリシャ勢は私の槍の前に退くしかない」と、ヘクトルは自軍を勇気づけると、兄弟デイポボスが先陣の前に進み出てきました。

そんなデイポボスにイドメネウスの部下メリオネスが、槍を投げつけました。しかし、槍はデイポボスの楯に阻まれ、メリオネスは槍を取りに陣屋に戻らざるを得ませんでした。

その間にも、大アイアスの弟テウクロスは、槍でインブリオスの耳の下を刺して殺しました。

一方、ヘクトルがアンピマコス(ポセイドンの孫にあたる)を倒すと、小アイアスはインブリオスの首をはね、ヘクトルの足元に投げつけました。

ポセイドンは孫の死に怒り、イドメネウスを鼓舞します。「クレテ勢を率いるイドメネウスよ、トロイアに対して言っていた大言壮語はどこへ行った」

この時のギリシャ勢はイドメネウスをはじめ、メリオネス、アンティロコス、そしてメネラオス、アスカラポス、アパレウス、デイピュロスの面々でした。
対するトロイア勢は、デイポボスをはじめ、アイネイアス、パリス、アゲノルらの面々でした。