1話5分で読めるギリシャ神話

ギリシャ神話の神・女神・英雄のエピソードが、絵画で分かりやすい。また、ギリシャ神話はあなたの美術鑑賞に役立ちます。姉妹サイト〈1話5分で読める聖書-アートバイブル

第二十一歌後編:神々の戦い アテネvsアレス

神々の戦いは、アテネvsアレス、ポセイドンvsアポロン、ヘレvsアルテミス、ヘルメスvsレト。といっても、戦ったのは、アテネとアレスぐらい。ヘレとアルテミスでは、大人と子供の喧嘩。アルテミスは泣いてオリュンポスに帰り、父ゼウスに慰めてもらう始末。残りの二組は、少しも戦わず。
もっとも、『イリアス』には記述されていないが、多くの神々の戦いがあったようだ。しかし、所詮アポロンの言葉ではないが、「死すべき人間のために、神々が戦うのは正気の沙汰ではない」のだ。そして、第二十二歌はいよいよ「ヘクトルの死」。

アテナとアレス
〈アテナとアレス〉

今度は神々同士が戦いはじめた。ゼウスはこれを見ると、我が意を得たりとその戦いぶりに高笑いをする。

アテネ vs アレス

アレスがアテネに躍りかかり、槍でアイギス(楯)を突いた。アテネは後ろに下がると、大きな黒い石を拾い上げ、アレスの首のあたりに投げつけた。アレスは倒れて、大きく手足を伸ばして地面に仰向けに倒れた。
「愚か者のアレスよ。私の方がそなたよりどれほど強いか、まだわかっていないのか」

この時、アレスの愛人アフロディテが、手を取り連れて行こうとした。それに気づいたヘレは、アテネに言った。アレスはヘレの息子だが、父ゼウスともども両親に嫌われていた。
「アテネよ、厄病神のアレスをアフロディテが連れて行こうとしている」
アテネは二人に近づくと、彼女の胸のあたりを一撃した。今度は二人とも倒れて、地に横たわった。

ポセイドン vs アポロン

一方、ポセイドンはアポロンに向かって
「アポロンよ、他の神々が戦っているのに、我々が何もしないのでは様になるまい。このままオリュンポスに帰るつもりか。年上のワシが先手を取るわけにはいかぬ。そちらからかかってこい。
かつて、我らはトロイアのラオメドン王の依頼で、城壁を築いたことがあったな。だが、王は約束通りの報酬を払うのを拒否した。そればかりが、我らを侮辱した。それなのに、そなたはトロイアに手をかすとは、なんたる愚か者か」

「大地を揺るがすポセイドンよ、人間のためとはいえ、私があなたと戦うとなれば、正気の沙汰ではない。だから、勝手に人間たちだけ戦わせておけばよいのだ」
アポロンはポセイドンにそう答えると立ち去ろうとした。

ヘラとアルテミス
〈ヘラとアルテミス〉

すると、ヘラと戦おうとしていた妹のアルテミスが兄を罵った。
「なんと愚かなことを。兄さんは逃げて、ポセイドンとは戦わぬのか。持っている弓矢は、ただの飾りか」

ヘラ vs アルテミス

アポロンを非難しているアルテミスに、ヘレは言った。
「恥を知らぬ牝犬め、どうして私に戦いを挑む。いくら狩りが好きだといっても、相手を間違えるな。そうか、戦い方を学びたいという魂胆なら、相手をしてやろう」
そう言いながら、ヘレは左手で相手の両手首をつかむと、右手で弓矢を奪い取り放りなげると、笑いながら耳のあたりを打ち続けた。アルテミスは泣きながらヘレの手を払いのけ、大切な弓矢を拾おうともせずに逃げて行った。

ヘルメス vs レト

こちらはヘルメスと、アポロンとアルテミスの母レト。
「レトよ、私はあなたと戦うつもりはない。どうぞ、神々の前で私をねじ伏せたと自慢してください」
レトもヘルメスとは戦う気はさらさらなく、娘アルテミスの弓矢を拾い集めてオリュンポスへ帰って行った。

その頃、アルテミスは泣きながら父ゼウスの膝の上に乗ると、父は娘を優しく抱き寄せて言った。
「可愛い娘よ、誰がそなたをこんな目に合わせたのだ。何か、悪さをしたのか」
もちろん、ゼウスには自分の妃ヘレがしたことはわかっている。
「あなたの奥方が、私を叩いたのです。神々が喧嘩することになったのは、みんなあの方のせいです」
こうして、ある神々は意気揚々と、またある神々は腹を立てたまま、オリュンポスへ帰ってきた。

その頃、アポロンはトロイア城内に忍び込んでいた。このままでは、アキレウスがトロイア城を陥落させてしまうかと心配したのだ。あってはならぬことであったが。

一方、アキレウスはトロイア勢を人といえ、馬といえ倒し続けていた。城門の上では、プリアモス王はそんなアキレウスを悲痛な思いで眺めていた。やがて、城門から降りてくると、逃げ帰るトロイア勢のために城門を開けさせた。
「されど、注意して見張っておれ、アキレウスが城内へ躍り込んでこぬか気がかりでならぬ」
城門は開かれて、味方の退路ができた。

アポロンの暗躍

アポロンもトロイア勢を救うために、アキレウスめがけて躍り出ていった。また、アポロンは、アキレウスと戦うかどうか迷っているアンテノルの一子アゲノルに力を吹き込んだ。
「進退、考えても仕方のないこと。アキレウスも人間、不死身ではないはず。今は、ゼウスの加護があるだけだ」
意を決したアゲノルは、アキレウスに向かって言った。

「アキレウスよ、トロイアを落とすにはまだまだ苦難が山の如くある。多数のトロイアの勇士が控えているからな。おぬしが大胆不敵な戦士であろうと、ここで最後を遂げることになる」
こういうと、アゲノルは槍を投げた。槍はアキレウスのすね当にあたり、弾かれた。アキレウスはすかさず、アゲノルに襲いかかったが、それよりも早くアポロンが彼を深い霧に隠し、戦いから離れさせた。

その後、アポロンはアゲノルの姿になり、アキレウスに捕まらないようにクサントス河の方に逃げていった。当然、アキレウスは追いかけた。
その隙に、トロイア勢は城門の中に逃げ込んで行った。

【イリアス】一覧へ

前のページへ 次のページへ