1話5分で読めるギリシャ神話

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第六歌前編:ヘクトル、パリスを叱る

ヘクトル、パリスを叱る
ピエール・クロード・ドロルム〈ヘクトル、パリスを叱る〉

(イリアス 第六歌 前編)
第六歌には、絵画でもよく取り上げられた2つの有名なシーンがあります。
「ヘクトル、パリスを叱る」(前編)と
「ヘクトルと妻アンドロマケとの別れ」(後編)です。

ギリシャ軍、トロイア軍を攻める

ギリシャ軍とトロイア軍は、シモエイスとクサントス両河の間で戦っていた。

メネラオスはアドレストスを生け捕りにした時、アドレストスは懇願した。
「わしの家は裕福だから、生かしておいてくれ。私が無事でいることがわかれば、父は莫大な身代金を払う」
家来がアドレストスを連れて行こうとしたその時、総大将であるメネラオスの兄アガメムノンが
「なんたる弱気か、メネラオスよ。彼らトロイア勢はこのイリオスから根絶やしにしなくてはならぬ」
そう言い放つと、二人でアドレストスをその場で刺し殺した。

占者ヘレノスの提言

一方、トロイアの王プリアモスの子である占者ヘレノスは、アイネイアスと兄ヘクトルに
「アイネイアスとヘクトルよ、戦いはそなたたち二人にかかっている。全軍を奮起させてくれ。けっして、城門の中に逃げ込ませてはならぬ。それから、ヘクトルよ、長老や妻たちに伝えてくれ、アテネにアキレウスをしのぐ戦いをしているディオメデスを退かせてくれるよう祈願してくれと。さすれば、アテネの神前に子牛12頭をお供えするとも」
この提言がなければ、トロイア軍は壊滅の危機に陥っていたであろう。

アイネイアスとヘクトルは陣中を叱咤激励してまわると、トロイア軍も盛り返しはじめる。ヘクトルは、
「トロイア勢よ、応援に来てくれた方々よ、男子の名にかけて戦ってくれ。わしはいったん戻り、長老と妻たちに女神アテネに願をかけるよう伝えてくる。あの鬼神のごときディオメデスをなんとかせねばならぬ」

ディオメデスとグラウコスは祖父のからの知り合い

この頃、ディオメデスとピッポロコスの子グラウコスが相対していた。ディオメデスは、グラウコスの勇敢ぶりに感服し、彼に素性をたずねた。すると、
グラウコスの父ピッポロコスは、あのキマイラ退治で有名なベレロポンテス(ベレロポン)であった。かつて、ディオメデスの祖父はベレロポンテスを20日間も家でもてなしていた。だから、二人は戦わず、お互いの武具を交換しようとし、戦車を降りて友情の誓いを交わした。この時、ゼウスはグラウコスの頭を狂わし、ディオメデスの青銅の武具に対して、はるかに価値のある黄金の武具を交換させた。

参照〈ペガソスを駆るベレロポン

ヘクトルの母ヘカベ、アテナに祈願する

ヘクトルは城門から中に入ると、母ヘカベに女神アテナへの願いをたのんだ。
「長老と妻たちにアテナに貢物を捧げ、あのディオメデスを引き下がらせようお願いしてください。私はこの戦争の原因パリスの邸に行きます。あいつが地獄に落ちれば、トロイアの民も安堵するに違いないのに。あやつは引き下がってまま、戦いに出てこぬ腰抜けだ」

長老や妻たちを集めたヘカベは女神アテナの祭壇に、
「女神の中でもひときわ美しいアテネよ、どうかディオメデスの槍をへし折り、城門の前で果てるようお計らいください。かなうならば、今すぐ子牛12頭をお供えいたします」
アテネが、これを聞き入れるはずはなかった。

ヘクトル、パリスを咎める
リチャード・クック〈ヘクトル、パリスを咎める〉

ヘクトル、パリスを叱る

ヘクトルはパリスの邸に入ると、パリスは豪華絢爛な武具をみがいているところ。
「お前はなんという男だ。何をぐずぐずしている。今この時にも、兵士はどんどん死んでいる。みんなお前のせいだ」
「兄者が私を責めるのはもっともなこと。私は無念の思いをかみしめていたのです。ヘレネが、再び私を戦場に立たせようとしてくれました。武具をつけるまで、しばらく待ってください。先に行っててくれれば、後を追います」

ヘレネもヘクトルに
「こんな悪女を妹にして、お気の毒な兄上。わたしは生まれた日に死んでしまったらよかったのです。しかし、今の不幸は神々がそのようにお定めになったのなら仕方ありません。兄上、この椅子にお掛けください。恥知らずなわたしとパリスのために、兄上は誰よりも心を痛めておりました」
「ヘレネよ、そうしているわけにはいかぬ。私は、今トロイア勢を守らねばと気が急いている。彼らは、私を持っている。もう戻れぬかもしれぬので、これから妻と子に会いに行く」

ヘクトルは最後の別れになるとも知らず、妻アンドロマケと子に会いにその場を去った。

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