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アキレウスの馬と戦車〈アキレウスの馬と戦車〉

トロイアの偵察者ベロン

トロイア軍もヘクトルの命令で、招集されていました。
「ギリシャ軍が今後どんな行動に出るか、知りたい。誰か、ギリシャの船陣の中に行って、彼らがこのままトロイアの地を去るのか、あるいは何らかの策を練っているのか確かめてきてほしい。それ相応の褒美を約束する」

すると、ベロンが名乗りを上げます。
「では、勝った暁にはアキレウスの馬と戦車を私にくださると誓約してください」

ヘクトルはそれに答えて、
「その戦車はあなた以外のトロイア人は乗らぬと、ゼウスとヘレにかけて誓おう」
ただちに、ベロンはギリシャの船陣へ向かいました。

ベロン、オデュッセウスとディオメデスに捕まる

「ディオメデスよ、敵陣から誰かやってくる。わが船陣を探りに来たのか。敵陣から離れたところで引っ捕えてやろう」と、オデュッセウスは言いました。

ベロンが船陣に近づいた時、「止まれ、さもなくば槍で撃つ」と、「ディオメデスよ、敵陣から誰かやってくる。わが船陣を探りに来たのか。敵陣から離れたところで引っ捕えてやろう」とオデュッセウスが言うと、すかさずディオメデスが槍を投げました。

槍はベロンの肩をかすめ、地面に刺さりました。
「どうか殺さずに生け捕りにしてください。必ず父が莫大な身代金を払います」と、ベロンは懇願しました。

オデュッセウス、ベロンから情報を得る

オデュッセウスは、ベロンの行動の理由を問います。
「アキレウスの馬と戦車が欲しくて、ヘクトルの指示でギリシャ軍の動向を探るために来ました」
とベロンが答えると、オデュッセウスは、「あの馬と戦車は、女神を母に持つアキレウスにしか乗れないのだぞ」と、あきれました。

その後、ベロンからトロイア軍と外国からの来援部隊の情報を聞き出しました。トロイア軍が夜の見張りをしていて、来援部隊は寝ていることなども聞き出しました。

また、トロイア軍の一番外れに着いた新たなトラキア王レソスの援軍についても聞き出しました。彼らの馬の大きさと足の速さ、金銀をあしらった車、神にふさわしいその武装などを。

トロイア軍の情報を詳しく話したベロンは最後に、尋ねます。
「あなた方がトロイア軍に潜入している間、わしの身はどうなりますか」
すると、すかさずディオメデスがベロンの首をはね、彼の武装は女神アテナに捧げられした。

オデュッセウスとディオメデス、トラキア王を虐殺

オデュッセウスとディオメデスはトラキア王レソスの駐屯地に着くと、ディオメデスは剣を振りかざして襲いかかりました。まず、12人のトラキア人をなぎ倒し、王レソスも13番目の犠牲となりました。

さらに、他のトラキア人も倒そうか思案していると、女神アテナがそばに来て言いました。
「ディオメデスよ、今は帰ることを心がけよ。敵に追われて、逃げ帰るようなことになってはならない。他の神々がトロイア軍を奮起させないとも限らない」

ディオメデスは馬を集めていたオデュッセウスとともに船陣に戻って行きました。

アテナの予想通り、この行動を見ていたアポロンはアテナの介入に腹を立てていました。王レソスの従弟ヒッポコオンの目を覚まさせましたが、オデュッセウスとディオメデスはすでにギリシャの船陣に帰り着いていました。