1話5分で読めるギリシャ神話

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魔女キルケ 後編

オデュッセウスとキルケ
バルトロメウス・スプランヘル〈オデュッセウスとキルケ〉

ヘルメースの忠告

キルケの館へ向かったオデュッセウスの前に神の使いヘルメースが現れました。
神の使いは珍しい薬草を取り出すと、「キュルケオーンを調合した飲み物の毒は、この薬草が防ぐので、すぐに剣を抜いて、敢然とキルケに立ち向かうこと。また、寝室に誘われても決してもすぐには応じぬこと。お前の精力を奪わないように、キルケにしっかり誓言させること」と忠告しました。

オデュッセウスはキルケの館を訪ねると、キルケが飲み物をすすめるままに飲みほしました。
「さあ、豚小屋に行って、仲間と一緒に寝ておいで」
杖で叩いても豚にならない彼を見て驚いているキルケ。

オデュッセウスは敢然と剣を抜いておどりかかると、キルケはオデュッセウスの足元にひれ伏し寝室に誘いました。
「そなたは、どういうお人ですか?この薬を飲んでも魔法が利かぬとは驚くばかり。その胸には魔法もかからぬ心が宿っているのであろう。かつて、あのヘルメースが言っていたオデュッセウスに違いあるまい。剣をおさめ、さあ私の寝台にあがり、愛の契りを交わそうではないか」

が、オデュッセウスはヘルメースの忠告通りに、
「私を裸にして、精気を抜くつもりであろう。断じてそうはせぬと誓言してくれ」
キルケが誓言すると、ふたりは寝台に上がり、愛の契りを楽しみました。

オデュッセウス、部下を解放させる

その後食事にななりましたが、オデュッセウスは手を付けません。キルケは毒などは入っていないので食べるよう促しましたが、オデュッセウスは言いました。
「部下を元の人間に戻して、この目で見られるようにしてくれ。そうでなければ、食事する気にもならない」

キルケは豚小屋に行くと部下を元の人間に戻しましたが、驚いたことに、彼らはかつての姿より若く逞しくなっていました。

オデュッセウスは浜辺の部下のところへ戻り、今までのことを話し、キルケの館で食事をすることを告げました。みんな同意しましたが、エウリュロコスだけは反対しました。やむなく彼を残して出かけることになりました。すると、彼もしぶしぶついてきました。頭、オデュッセウスには逆らえないのです。

こうして、オデュッセウス一行はキルケの館で飲み食いするようになり、たちまち一年が経ちました。

オデュッセウス、冥界への旅立ち

ある日、部下の一人がオデュッセウスに訴えました。
「このままここにいるのですか?故郷へは帰らないのですか?」
すると、みんな故郷を思い、はらはらと泣き出しました。このことをキルケに伝えると、キルケは一行の旅立ちを受け入れました。

キルケは、オデュッセウスに進言しました。
「冥界に行き、テーバイの予言者手テイレシアスに先々なにが起こるか訊ねなさい」
また、冥界への行き方やいけにえに捧げる牡羊と黒い牝羊それぞれ一頭もあたえました。

オデュッセウスが部下たちに冥界行きのことを伝えると、故郷にすぐ出発すると思っていた部下たちは心くじけ、髪をかきむしり嘆きました。しかし、オデュッセウス一行は、冥界に向け旅立ちました。

キルケとオデュッセウス
ヤン・ファン〈キルケとオデュッセウス〉