1話5分で読めるギリシャ神話

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最後の決戦

天界の戦いよりアテーナ
〈天界の戦いよりアテーナ〉

〈オデュッセイア 第二十四歌:終〉

オデュッセウスと老父ラエルテスの再会

オデュッセウスはテレマコス、豚飼い、牛飼いを連れて、老父ラエルテスの屋敷に向かった。果樹園に着くと、オデュッセウスは三人に屋敷に行くよう指示した。自身は、帰国したことを話したほうが良いか、父親を試して情報を得たほうが良いか思案していた。

果樹園では、ラエルテス自身が土を耕していた。オデュッセウスは近づき、また作り話を父にしはじめた。
「ここはイタケであるのか教えて欲しい。それと言うのも、昔オデュッセウスというイタケの王をもてなしたことがあるのだ。彼が帰る時にはたくさんの財宝、女も四人贈ったのだが......」

老父は涙を流し答えた。
「ここはイタケで間違いない。その者がおれば、同じような贈り物をそなたにしたであろう。しかし、それは叶わぬ。今は無法者が治めているのでな。ところで、おぬしがその者を客としてもてなしたのは何年前のことじゃ。その客は、わしのせがれだ。まだ帰国しておらぬ。もう、死んでいるのであろうが、葬いも出してやれぬ」

老父ラエルテスの呻き

オデュッセウスが作り話を続けると、父は呻きながら黒い土を手にし、頭に振りかけた。その姿に、オデュッセウスの胸は高まり、作り話はもうできず
「父上、私です。嘆くのはおやめください。やっと20年目に帰国し、ならず者の求婚者らを討ち果たしてまいりました。風雲急を告げています」
「まことか!なれば、証拠を言ってくれ」

オデュッセウスはイノシシの白い牙でつけられた足の傷、かつて老父が教えてくれたブドウや梨の話、将来やると言った果樹園のことなどを話した。老父はへなへなと膝をつき、子はその体をしっかりと抱きしめた。二人は果樹園のそばの屋敷に向かい、テレマコスと豚飼い、牛飼いと合流した。その後、妻からの知らせを受けた老ドリオス一家も駆けつけてきた。

求婚者親族の決起

この頃、噂の女神オッサ(ペーメー?)が求婚者らの不運な死を町中に伝え回っていた。求婚者の親族は遺体を運び出し埋葬し、集会場に集まった。アンティノウスの父エウペイテスは弁じた。
「オデュッセウスは、なんと大それたことをしでかしたことか。彼が海の向こうに逃げる前に仕返しせねば、家代々の恥辱である。早速、報復に出かけようではないか」

その時、テレマコスの助言で生き残った伝令使メドンが、皆に忠告した。
「オデュッセウス王は神に背いて、このようなことを企てたのではない。私はメントルの姿になったある神がオデュッセウス王のそばに立っていたのを二回も確かに見たのだ。」
神と聞いて、集会場の全員は蒼白となった。

すると、過去も未来も見通すことのできる老雄ハリテルセスが口を開いた。
「よいか皆の衆、こうなったのは、せがれどもに『卑劣な行いを止めさせよ』と言ったわしや老雄メントルの言葉に、そなたたちが従わなかったからだ。オデュッセウスがよもや帰るまいと思って、その財産を食い荒らし、その貴婦人を娶ろうとした大罪を犯したのだ。だから、報復に出かけるのはやめることだ」
が、大半の者どもはエウペイテスに従い、武具に身にまとうと出かけて行った。

噂の女神ペーメー:神々や人間の様々な事柄を覗き、見聞きしたことを最初はささやき声で、その後徐々に大きな声で話し、全員が知るまでそれを繰り返したという。舌や目や耳がたくさんあり、羽が生えているという。また、彼女は1000の窓がある家に住んでいて、世界中で話されていることを聞き取っているという。

ペーメー
ジャック・イグナティウス・デ・ルアール〈ペーメー〉

オリュンポス山のアテーナとゼウス

アテーナが父ゼウスに問うた。
「父上、この先は苦難の戦いか和解か、どうお考えなのでしょうか」
「娘よ、そもそもこの件はそなたが考え出したことであろう。思い通りにするがよい。だが、わしの考えは、和解してイタケはオデュッセウスのもと末長く幸せな国にすることじゃ」
ゼウスに促されて、女神アテーナは脱兎のごとく、オリュンポス山を駆け下りていった。

最後の決戦と和解

今まさに両陣営は相対していた。オデュッセウス側は老父ラエルテスとテレマコス、豚飼い、牛飼い、ドリオスの一家7人の総勢12人。少数であるが、士気は盛んであった。そこへ、メントルに姿を変えたアテーナが現れ、ラエルテスに向かって
「そなたは、わしの一番の友、父神ゼウスと姫神アテーナに祈願をこめ、槍を投げよ!」
女神は彼に凄まじい力を与えた。ラエルテスの投げた槍は、見事エウペイテスの兜を貫いた。これに怯んだ敵の先鋒に、オデュッセウスたちは襲いかかり、なぎ倒していった。

この時、女神アテーナは叫んだ。
「イタケの人よ!今は戦いを止め、即刻引き分けて流血の惨事を避けよ」
すでに戦意消失していた敵に、オデュッセウスたちが襲いかかろうとした時、ゼウスが雷電を女神の前に落とした。

「オデュッセウスよ、争いは止めよ。さもなくば、ゼウスのお怒りを買うかもしれぬぞ」
こうして、両陣営の間にいつまでも守るべき堅き誓いが交わされた。
(オデュッセイア 終)