1話5分で読めるギリシャ神話

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アキレウスと不死身のキュクノス(白鳥)

トロイア戦争初期のトロイア側の英雄は、ヘクトルとキュクノス。アキレウスは戦場に出るたびに、この二人を探しました。が、そんなはずはないと思いますが、ヘクトルに会うには丸9年間かかったということです。(その物語は『イリアス』参照)
ここでは、アキレウスとポセイドーンの子であるキュクノスの戦いを取り上げます。そして、白鳥のいわれも。

ポセイドーン
ウォルター・クレイン〈ポセイドーンの馬〉

トロイアの英雄ヘクトルとポセイドーンの子キュクノス

ギリシャの船団がトロイアのシゲイオン岬に近づいてきたときには、ヘクトルを筆頭にトロイア側はすでに待ち構えていました。浜に最初に上陸したギリシャ勢の大将プロテシラオスは最初の犠牲者となる運命。倒したのはヘクトルです。このことから、彼はトロイアの随一の武将と名声を上げました。

そして、もう一人名を轟かしていたのがポセイドーンの子キュクノスです。彼も多数のぎりしゃぜいを殺していました。ギリシャ側では、やはりアキレウスが有名で、彼もトロイアの兵士を多数殺していました。

槍や剣では倒せない不死身のキュクノス

アキレウスは戦場に立つと、ヘクトルかキュクノスを探しました。この時出会ったのがキュクノスです。
「若者よ、これを冥土の土産にすることだ。テッサリアのアキレウスに打ち取られたとな」
こう言うと、アキレウスは自慢の槍をキュクノスに投げました。

しかし、どうしたことでしょうか。槍がキュクノスの体には弾き飛ばされます。
「女神テティスの息子よ、あなたのことはよく聞いている。だが、どうして槍が私の体に刺さらないのか不思議か」
アキレウスは、確かに不思議な思いにとらわれていました。

「私の体には兜や盾は必要なく、軍神アレスと同じで、単なる飾りなのだ。だから、私はいつも無傷で戦場を後にする。単なる海神ネーレウスの娘の子とは訳が違うのだ。これが、海や海の神を支配するポセイドーンの息子なのだ」
こうキュクノスは言うなり、アキレウスに槍を投げたのです。槍はアキレウスの厚い盾に阻まれましたが、なんと十枚の皮の九枚目まで達していました。

アキレウスはキュクノスに二度、三度と槍を投げます。しかし無防備なキュクノスの体に、傷一つ負わせることはできません。普通の兵士なら、ここで恐ろしくなり、逃げてしまうことでしょう。しかし、アキレウスは怒りに燃えました。

アキレウスの怒り

「槍の穂先がなかったのか、それとも俺の腕が鈍ったのか。いやそんなことはないはずだ。現にトロイアにきててからも多数の兵士を討ってきた」
そう確信すると、キュクノスの前いるメノイテスに槍を投げてみました。槍はメノイテスの胸当てを貫き、彼は地面に突っ伏しました。アキレウスは、メノイテスの体から槍を引き抜くと
「俺の腕は鈍っていないし、まさしく俺の槍だ」
こう言いと、再度キュクノスに槍を投げつけました。

しかし、槍はキュクノスの体にはじき返されました。まるで固い岩に当たったかのように。
怒ったアキレウスは戦車から飛び降りると、剣を持ってキュクノスに向かって猛然とダッシュしました。近づくと、剣を振り下ろし兜と盾を切り裂きました。

キュクノスの窒息死と白鳥

しかし、キュクノスの体に当たった剣の先は曲がっていたのです。堪忍袋の緒が切れたアキレウスは盾でキュクノスを何度も打ちつけ、剣の柄で顔面を殴りつけます。息ができなくなったキュクノスはあとずさりますが、アキレウスはそれを許しません。

アキレウスは石の上にキュクノスをうつ伏せに倒すと、背中に乗り兜の紐でキュクノスの首を締めます。そして、とうとうキュクノスは息絶えました。アキレウスは戦場の習いで、討ち取った相手武具を剥ぎ取ろうとすると、キュクノスの体はすでになく武具は空っぽです。

海神ポセイドーンが、息子を白鳥(キュクノス)にしたのです。

白鳥の羽ばたき

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