1話5分で読めるギリシャ神話

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潜水鳥アビになったアイサコス

アイサコスとヘスペリエ
変身物語の挿絵〈アイサコスとヘスペリエ〉

トロイア王子アイサコス

アイサコスは、トロイア王プリアモスの最初の妻アリスベーの子である。アリスベーの父メロプスから夢占いを教えられた。プリアモス王の第2の妻ヘカベーがパリスを生む前、燃え木を生み、これが全トロイア市を焼き尽くすという不吉な夢を見た。プリアモス王は、アイサコスを呼び、その夢占いをさせた。

「父よ、今度生まれる赤子は国の破滅になりますので、捨ててください」

こうして生まれたパリスは、召使いアゲラーオスにイーデー山に連れて行かれ捨てられた。その後、パリスは5日間クマに育てられた。召使いはそれを確認すると、パリスを自分の農場につれていって育てた。パリスはよく農場の羊を守ったので、アレクサンドロス(守る男)というあだ名がついた。(アポロドーロス『ギリシャ神話』)

河神ケブレンの娘、ニンフのヘスペリエ

ところで、アイサコスは不思議な運命に見舞われなければ、ヘクトールと同じくらいの名声を得たことであろう。以下は、『変身物語』による。彼の母はアリスベーではなく、河神グラニコスの娘アレクシロエである。

アイサコスは都市や宮殿を嫌って、へんぴな場所や田園に住んだ。トロイア人の集まりにも、めったに顔を出さなかった。かといって、野暮ったい田舎者でもなかった。彼は、河神ケブレンの娘、ニンフのヘスペリエに恋をし、森から森へと追いかけ回していたのだ。

アイサコスとヘスペリエ2
『変身物語』の挿絵〈アイサコスとヘスペリエ〉

逃げるヘスペリエ、追うアイサコス

ある日のこと。ヘスペリエは父河神の川岸にすわり、肩の上に髪をひろげて太陽に当てていた。アイサコスは彼女を見つけると、走って近づいた。ヘスペリエは不意に敵に襲われたかように、逃げ出していた。彼は彼女を追いかけた。

ヘスペリエも早かったが、アイサコスも早かった。その追いかけっこの最中、草の茂みに隠れていた毒ヘビが彼女の足を噛んだ。毒は、すぐさま彼女の息の根を止めた。彼は彼女を抱きかかえると、
「僕が君を追いかけたばかりに、君は死んでしまった。噛んだ毒ヘビより、きっかけをつくた僕の方がもっと悪い。死んで、償おう」
大声で叫ぶと、アイサコスは海に突き出している絶壁に登って行った。彼は海に身を投げた。

潜水鳥アビになったアイサコス

それを見ていた海の女神テテュスが彼を憐れみ、優しく受け止め、波間に漂よわせ、優しく羽毛で包んであげた。こうして、彼の死の償いは、果たされることはなかった。

アイサコスは腹を立てた。
「なぜ死なせてくれない。もう生きたくない者を無理やり生きさせるとは!もう、肉体から離れたがっている霊魂が、それを許されないとは!」
彼は肩に生えたばかりの翼を使って、大空高く舞い上がった。そして、海中に激しく身を投げた。が、羽が落下の勢いを弱めた。アイサコスは怒り狂って、海中深く突き進んで、死を望んだ。

こうして、アイサコスは来る日も来る日も海に深く潜っていた。やがて、彼の顔も体も細くなり、首は長く伸び、足は細長くなった。潜水鳥アビに変わっていたのだ。

アビ
〈アビ〉