1話5分で読めるギリシャ神話

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アルゴー船の遠征 4

黄金の羊毛:弟を海に投げるメーデイア
ハーバート・ドレイパー〈黄金の羊毛:弟を海に投げるメーデイア〉英国カートライト・ホール

アイエーテース王の怒りと追跡

次の日の朝。
「ギリシャ勢が一人もいません」
家来がきてアイエーテース王に報告しました。
「メーデイア姫様と弟君アプシュルトス様もおりません」
乳母も王に告げました。
「くそ〜、ギリシャ人め!メーデイアめ!イアソーンに惚れてしまったか」

王はすぐ船団を集めると、アルゴー船を追いかけました。


「イアソーン様、父の船団が迫ってきます!」
さらに、船上の父アイエーテース王の顔も見えるほど近くなると、メーデイアは叫びました。
「父上、何人たりとも私の幸福の邪魔はさせません!」

アルゴー船の漂流とセーレーンの島

メーデイアは近くにいた弟アプシュルトスをつかみ上げると、頭、手足を切り離し、体とともに海に投げ入れました。アイエーテース王の追手は船を止め、アプシュルトスの体を探しはじめました。
こうして、アルゴー船は逃げることができたのです。しかし、ここに残酷なメーデイアに対するギリシャ勢のわだかまりが残ってしまいました。

このことは大神ゼウスの怒りにも触れました。さすがに、ゼウスの妻ヘーラーにしても、夫の怒りを鎮めることはできなかったのです。その後、アルゴー船は風と大雨と大波にもてあそばれ、ある群島に漂流しました。後にアプシュルトス群島と名付けられたところです。

さらに船は漂流し、何やら美しい歌声が聞こえてくる島に近づきました。セーレーンの島です。船員を誘惑、船を岩礁で遭難させ、その乗組員を食べてしまう魔女の島です。最初は聞き惚れていたイアソーンですが、我に返りオルフェウスを呼びました。オルフェウスは竪琴を鳴らし、その美しい声で歌いました。するとギリシャ勢は正気に戻りました。が、セーレーンの声に引き込まれ、島に泳いでいってしまった者も一人だけいました。

次に、大きな渦巻きに巻き込まれた船の船員をつまみ上げては食べてしまうの巨人の島が見えてきました。今にも渦巻きに引き込まれそうになった時は、さすがのメーデイアもその死を覚悟したほどです。が、ヘーラーの集めたニンフたちが手に手を取って渦巻きの防波堤になり、アルゴー船を救ってくれました。

キプロス島の青銅人間

アルゴー船は故郷の近くまで帰ってきましたが、最後の難関がヘーパイストスが作ったキプロス島の青銅人間です。近くを通る船に大きな岩を投げつけ、沈没させてしまいます。ここで、メーデイアが一計を案じ、青銅人間に言いました。
「血液を不死の神血に変えてあげましょう」

青銅人間は美しいメーデイアに安心して、船を近づけました。実は、青銅人間は頭から足まで、1本の血管だけが通っています。そして、その血管は簡単に釘で止められているだけなのです。その場所をメーデイアは確認すると、即座に釘を引き抜きました。血液は流れ出し、青銅人間はその場に倒れてしまいました。

こうして、アルゴー船は故郷イオルコスに帰ってきました。

メーデイア
シャルル・アンドレ・バンルー〈メーデイア〉

メーデイアの魔力で、イアソーン復讐を果たす

一方、イアソーンがなかなか帰ってこないのを理由にして、ペリアースは父親のアイソーンと幼い弟を殺していました。母親も嘆き自殺していました。(年老いたアイソーンは生きていて、メーデイアが若返らせる別説もあります)

イアソーンはペリアースに金羊毛を渡しました。が、ひそかに復讐を決意。メーデイアは、ここでも一計を案じました。ペリアースの娘たちの前で老いた羊を切り刻んで、薬草を入れた釜に入れ、生きた子羊に変えてみせたのです。娘たちは父親も同じように若返えるようメーデイアに頼みました。

薬草の入った釜を用意すると、娘たちに父親ペリアースを呼ばせ、その体を切り刻ませ、釜に入れさせました。当然、若返り生き返らせることはありません。こうして、イアソーンは復讐を果たすことができたのです。が、イオルコスの人々は、魔力と簡単に人を殺すメーデイアを恐れ、イアソーンともども追放してしまいました。

メーデイアの逃亡とイアソーンの死

二人はコリントスに逃れ、二人の子供と10年間幸福に暮らしていました。やがてコリントスの王クレオーンがイアソーンをたいそう気に入り、王女グラウケーとの結婚を申し出ました。
「コリントスの未来を、あなたのような英雄にまかせたい」

イアソーンは、メーデイアの一途ではあるがその魔力と気性の激しさから、嫌気がさしていたところだったので、この申し出を受けることにしました。そして、王が用意したお金をメーデイアに渡すと、離縁を告げました。

「このお金を持って、子供と一緒に他国に行ってほしい」
「コルキスでも、アルゴー船の航海でも、父親の復讐でも、あなたを助けたのに。なんという仕打ち!」
メーデイアは激怒し、王女に毒薬をしみ込ませた衣を贈りました。気に入って衣を着た王女は、毒薬で肌が焼けこげ、助けようとした父王ともども焼け死んでしまいました。

今度はイアソーンが怒り、メーデイアのところに行くと、彼女は二人の子供メルメロスとペレースまで殺してしまい、有翼の竜の戦車に乗ってアテーナイに逃れていきました。アテナイのアイゲウス王は彼女を受け入れ、後に結婚しました。アイゲウス王はテーセウスの父です。

年老いたイアソーンは、故郷の草むらの中に朽ち果てていたアルゴー船に寄りかかり、死んでいたということです。

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