1話5分で読めるギリシャ神話

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プロクネとピロメラ姉妹、蛮族の王テーレウス2

「なんとか、姉さんにことの真相を伝えるには、どうしたら良いのだろう」羊小屋に閉じ込められたピロメラは、舌がないので叫んで助けを呼ぶこともできません。
しかし、逆境は人に知恵を授けます。はたおり機に糸をかけ、白地に緋色の文字を織り込んで、召使の女に身振りで王妃である姉プロクネに持って行くよう頼みました。

ピロメラをレイプするテーレウス
〈ピロメラをレイプするテーレウス〉

ピロメラのもの言わぬ運命の始まり

ピロメラを乗せた船が、テーレスの故郷トラキアに到着しました。
しかし、姉プロクネの待つ館にピロメラが会いに行くことはありません。彼女は太古の森にある羊小屋に、トラキア王テーレウスに連れ込まれたからです。
姉の名、父の名、神々の名を叫んでも、男の情欲の前ではなすすべもありません。ピロメラは、何度もテーレウスに犯されたのです。

ピロメラは生きていることさえ不思議に感じるほど、呆然としていました。しばらくして、気をとりなすと髪をかきむしり、テーレウスに食ってかかりました。
「何たる野蛮人。父の願いも、姉の真心も無視して、私の純潔を奪う、こんな酷い行為に及ぶとは。私は、もう姉の恋敵になってしまった。そうなる前に、殺してくれれば良かったに。そうすれば、汚れなき体で黄泉の国に行けたのに。
私は断じてあなたを許しません。恥になっても、このことを公にいたします。それがだけなら、この森中に響く声で、あなたを断罪いたします。神々もあなたの行為を許すことはないでしょう」

遺体のないピロメラの墓

情欲がおさまったテーレウスは、ピロメラの言葉に怒りと恐怖を感じました。そして、彼女を後ろ手に縛り上げました。それでも、ピロメラは殺されることをものともせず、首を前に出し、なおも断罪の言葉をしゃべり続けようとしたのです。
恐れをなしたテーレウスはピロメラの舌を鉗子ではさみ、引き出すと、剣で切って落としました。そして、あろうことか、またピロメラを犯したのです。

テーレウスは何事もなかったように館に帰ると、待ちわびている王妃プロクネに
「妻よ、残念なことに、ピロメラは航海の荒海にさらわれてしまった。もう死んでしまったことであろう。私が付いていながら申し訳ないことをした」
と、涙ながらにこ作り話を語りました。プロクネは喪服に着替えると、遺体のない墓を建てました。

ピロクネの思いを込めた織物

こうして、一年間が過ぎて行きました。
「なんとか、姉さんにことの真相を伝えるには、どうしたら良いのだろう」
兵が見張っている羊小屋に閉じ込められたピロメラは、舌がないので叫んで助けを呼ぶこともできません。
しかし、逆境は人に知恵を授けます。
「そうだ、織布に伝言を縫いつけよう」
さっそく、はたおり機に糸をかけ、白地に緋色の文字を織り込んで、召使の女に身振りで王妃プロクネに持って行くよう頼みました。

何も知らない召使の女は、織布を王妃プロクネに届けました。王妃は織物を広げ、妹の悲運を、また自分の悲運をも読みました。
「ウッ!」
あまりの真相に、王妃は言葉を失いました。しかし、号泣して泣き叫ぶわけでもなく、口を押さえ、じっと一点を見つめていました。
テーレスの暴力に毅然とした態度をとった妹ピロメラ。まさに彼女と同じ血が流れている姉プロクネは、ただ一つのことを思いつめていたのです。

それは「報復」。時は2年目ごとのバッカスの祭りの夜でした。

バッコスの祭りに出かけるプロクネ
〈バッコスの祭りに出かけるプロクネ〉

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