〈ギリシャ側の神々〉
ゼウス、神々を招集
ついに、アキレウスが戦場に立ちました。それを見届けると、ゼウスは女神テミスに全ての神々をオリュンポスに召集させます。河神オケアノスをのぞき、全ての神々がゼウスの館に集まってきました。
いち早く、ポセイドンが口を開きます。
「雷光の神ゼウスよ、なぜ、われわれを招集したのか?」
「ポセイドンよ、わしの意図は察しがついているだろう。もはや、わしは動かず、見物することにした。だから、そなたたちはトロイア側だろうが、ギリシャ側だろうが思うようにすればよい。
アキレウスが立ち上がったとなれば、このままでは運命に逆らって、トロイアを陥落するやもしれん。それは断じてならぬ事と決まっているからな」
トロイア側の神々vsギリシャ側の神々
かくして、ギリシャ側についた主な神々は、ヘラ、アテナ、ポセイドン、ヘルメス、ヘパイストスなど。
一方、トロイア側についた主な神々は、軍神アレス、アポロンとその妹アルテミス、その二人の母レト、アフロディテなど。
神々は両軍を鼓舞して戦わせるとともに、自らも参戦します。
〈トロイア側の神々〉
アポロン、アイネイアスを鼓舞
早速アポロンはプリアモス王の息子リュカオンとなって、アイネイアスを促します。
「アイネイアスよ、かつてアキレウスと一騎打ちの勝負をすると言ってたな。その豪気は今はどこへ行った。今こそ、その時ではないのか」
「なにゆえ、そなたは私とアキレウスを戦わせようとする。私は一度、彼に追われたことがある。幸い、その時はゼウスに救われた。それにな、アキレウスの前にはいつもアテナがいるのだ。女神がいなければ、私とて簡単に引き下がるつもりはない」
「アイネイアスよ、おぬしの母はオリュンポス12神の一人アフロディテ。それに対して、アキレウスの母は海の老人ネレウスの娘テティスではないか。身分の違いは天と地ほどもある」
アポロンはこう言って、アイネイアスを鼓舞します。
アポロンを見逃さないヘラ
「ポセイドンとアテナよ、アイネイアスがアキレウスに向かっていく。アポロンが鼓舞したのだ。誰かわれらの神が行って、アキレウスが気後れせぬようにしなければ」
ポセイドンがそれに答えます。
「ヘラよ、腹をお立てになるな。わしは、他の神とは戦いたくはない。アレスかアポロンがアキレウスを動けぬようにするなら、その時はわれらも戦おうではないか。向こうの神は、我らより力が劣るのは明白だからな」