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パトロクロスの葬送ダヴィッド〈パトロクロスの葬送〉

アキレウスの凱旋

トロイアの市民が悲嘆にくれている中、アキレウスはヘクトルを戦車につないだまま自陣に帰ってきました。アキレウスとミュルミドネス勢は慟哭しながら、パトロクロスの遺体の周りを三度回ります。アキレウスの母テティスもその場にいました。

「パトロクロスよ、冥王の館にあっても機嫌よく暮らしてくれ。ヘクトルは討ち取った。また、トロイアの12人の立派な若者の首も、そなたを焼く火の前で首を切ろう」

その後、アガメムノンは、アキレウスに浴びた血と砂ぼこりを落とすよう促したが、彼は拒みました。

「パトロクロスを火葬にし、墓を築いて髪を切って弔うまでは湯水を浴びることはない。アガメムノンよ、明日になったら、葬儀の一式を揃えてもらいたい。今はまだ食事をする気も起こらないが、みなと食事を取ろう」

一同は、食卓の席に着きました。

パトロクロスの亡霊

食事をとると、さすがのアキレウスも今日の戦いの疲れが出て、うとうとしはじめました。すると、パトロクロスの亡霊が現れ、彼に語りかけます。

「アキレウスよ、私を忘れたのか。一刻も早く冥府の門をくぐれるよう、弔ってくれ。さもないと、亡霊たちが私を受け入れてくれないのだ。それから一つお願いがある、私の骨は、いずれ死ぬあなたの骨と一緒の壺に納めてもらいたい」

「友よ、なぜそのようなことを言う。そなたの言う通りすべて執りおこなう。さあ、近くに来て語り明かそう」
そう言うと、アキレウスは手を伸ばしましたが、パトロクロスの亡霊は地下に消えていきました。

トロイアの若者12人の首をはねる〈トロイアの若者12人の首をはねる〉

パトロクロスの葬儀

明け方になると、葬儀の準備はイドメネウスの従士メリオネスにより行なわれました。葬儀の場所は、いずれアキレウスがパトロクロスと一緒に入るであろう塚を築く海辺です。

薪を高く積みあげ、その上に遺体を寝かします。牛と羊の皮を剥いで、その脂身で遺体を包みます。動物の死骸が彼の周りにおかれます。さらに、馬4頭も並べられます。パトロクロスが生前飼っていた9匹のうち2匹の犬も積みあげた薪の中へ投げ入れます。

そして、積まれた薪の前で、トロイアの12人の若者の首も切り裂かれました。それから、火をつけましたが、火は燃え上がりません。アキレウスは北風と西風に生贄を約束し、酒を献じました。

これを聞いた虹の神イリスは、すぐさま風神の館に行きます。風神は女神を館の中に招き座るよう促しましたが、女神は入ることは拒みました。
「座るわけにはまいりません。今アキレウスが生贄を約束し、パトロクロスを焼く薪を早く燃え上がらせて欲しいと願っています」

そう告げると、イリスは立ち去りました。北風と西風はすぐさま海岸に飛んでいくと、すさまじい風を起こします。火はたちまち燃え上がります。アキレウスは燃え上がる火の周りを歩き、悲嘆にくれ呻き声を漏らしました。

一方、ヘクトルの遺体は、アフロディテにより腐らぬよう香油を塗られ、アポロンによって鳥や野犬に食いちぎられることはありません。