サルヴィアーティ〈カイロス〉
「チャンスの神様は前髪しかない」──この言葉に秘められた深い意味と、その英語表現について調べてみました。
この謎めいた表現は、古代ギリシャ神話の神、カイロスに由来しています。その神話的な背景には深い教訓が隠されています。
「チャンスの神様は前髪しかない」の意味
チャンスの女神には前髪しかない!
とも言われるギリシャ神話の神の名はカイロス。元来は女神ではなく、男神です。
「好機はすぐに捉えなければ、後から捉えることはできない」という意味。
長い前髪のため、前からではカイロスをつかまえやすい。しかし、後頭部はハゲなので、過ぎ去ってからでは髪をつかもうとしてもつかめないからです。
絵画や彫刻では、前髪は長いが後頭部がハゲた美少年としても表現されており、両足には翼もあります。まるで、ヘルメスのようです。
キオスの悲劇作家イオーンによれば、カイロスはゼウスの末子とされていますが、母は不明。オリュンピアには、カイロスの祭壇があったといいます。
「チャンスの神様は前髪しかない」英語
Seize the fortune by the forelock.
seize=つかむ
forelock=前髪
「チャンスの神様は前髪しかない」という言葉は、古代ギリシアの詩人ポセイディッポスの詩から来ているとされています。
この詩は、時の神カイロスについてのもので、出会った人がつかまえやすいように髪を顔の前に垂らしてあるが、追いかけてつかむことはできないよう、後頭部には髪がない、と書かれています。
And why do we not catch hold of the forelock of his head?
Of Opportunity (Kairos) who has a bald back we seize upon by his forelock.
また、レオナルド・ダ・ヴィンチの残した言葉とも言われています。
カイロス(時刻)とクロノス(時間)の違い
καιρός(カイロス)= 時刻
「機会」や一瞬、人間の主観的な時間を表すこともあり、内面的な時間
ρόνος(クロノス)= 時間
過去から未来へと一定速度・一定方向で機械的に流れる連続した時間
カイロスは、ギリシア語で「機会(チャンス)」を意味する Kαιρός を神格化した神様です。
元は「刻む」という意味の動詞に由来しているといいます。
サルヴィアーティ〈正義〉
竹内まりあ『チャンスの前髪』
竹内まりあ『チャンスの前髪』には、次のような歌詞があります。
Oh チャンスの神様は 前髪しかないから
通り過ぎたら 手に入れることは無理よ
まとめ
「チャンスの神様は前髪しかない」──この言葉がもたらす神話的な啓示は、好機を逃さずに掴むことの重要性を物語っています。
カイロスの前髪を象徴とした神話は、時間と機会を巧妙に結びつけ、迅速な行動の重要性を伝えています。
この言葉は、過去の詩や芸術を通じても伝わり、「前髪」を逃すことなく、人生のチャンスをしっかりとつかんでいくことの意味を我々に問いかけているのです。