〈ロックフェラーセンターの正面前にあるプロメテウス像〉
スキュティアの聳え立つ岩山
プロメテウスは、〈権力〉神と〈暴力〉神に引っ立てられ、岩山の頂上につれてこられました。後ろには、鍛冶(かじ)の神へパイストスがついてきます。鍛冶の神は、自分で作ったプロメテウスを岩山につなぐ枷(かせ)とクサリを持っています。
〈権力〉は、言いました。「さっさとプロメテウスを岩山に縛り付けよ。大神の命令だ!」。へパイストスはあまり気乗りはしなかったのですが、父である大神ゼウスの命令と言われては仕方がありません。
大神ゼウスの知りたいこととは?
〈「火を盗んで人間に与えた不届き者」〉ということで、大神ゼウスに罰を与えられたプロメテウス。実は、ゼウスにはもう1つ本当に知りたいことがあったのです。プロメテウス(先を見るもの)だけが知っている秘密です。
しかし、大神ゼウスの命令であろうと、プロメテウスは決してその秘密を明かすことはなかったのです。
ルーベンス〈ペーレウスとテティスの結婚式〉
縛られたプロメテウス
岩山につながれたプロメテウスは、日々肝臓をオオワシについばまれます。しかし、神であるがゆえに、次の日には肝臓は元どおりになり、またついばまれる苦しみ。ゼウスの許しがないかぎり、この苦しみは永遠に続くのです。
〈先を見るもの〉プロメテウスは全てを知っていて、ゼウスのなすがままにしていたのです。イーオーのはるか先の子孫ヘラクレスによって、この苦しみから解放される日が来ることをも含めて。
ですので、ゼウスの子、伝令の神ヘルメスがやってきて「早く秘密を明かして、楽になったらどうだ!」と言っても、プロメテウスは決して秘密を明かさなかったのです。
ルーベンス〈縛められたプロメテウス〉
ゼウスの秘密とは?
その秘密とは、ゼウスが恋する女神との間に生まれる子が、ゼウス以上の力を持ち、彼に代わり支配者になるということ。ゼウスは何とかその秘密を知ろうとして、このような罰をプロメテウスに与えたのです。
思い返せは、天空の支配者ウラノスを倒したのはその子クロノス。クロノスはタイタン族で、彼らを倒したのがその子ゼウスとオリュンポスの神々です。未来に、自分を倒す者が現れるとしたら、それはゼウスの子に間違いありません。父クロノスも警告していたはずです。
ゼウスに変わる支配者を生む女神とは?
それは、アキレウスの母となる海の女神テティスだったのです。ゼウスのあとを継いだ大神は現れなかったので、何らかの方法でゼウスはその秘密を知ったはずです。
しかし、ギリシャ神話にはそのエピソードがありません。とにかく、ゼウスはテティスが自分を倒す子を生むと気づくと、女神を人間ペーレウスに押し付けたのです。2人の結婚式の時、トロイア戦争の発端になった「黄金のリンゴ」が投げ込まれたました。
ペーレウスとテティスから生まれた英雄がアキレウス。なぜアキレウスはゼウスの次の覇者になれなかったのか?
※プロメテウスは、タイタン族イーアペトスとオケアノスの娘であるクリュメネとの子。したがって、あのアトラスとは兄弟になります。
→アキレウスの母テティスの結婚がもたらした、衝撃のトロイア戦争
→縛られたプロメテウス[1]新しいゼウスの秘密とは?[ギリシャ悲劇]