ドローリング〈アキレウスの怒り〉
トロイア戦争、10年目
アポロン神殿の祭司クリュセスの娘クリュセイスが、奴隷としてギリシャ総大将アガメムノンの手にありました。父親は娘を開放してほしいとギリシャの戦陣まできました。しかし、アガメムノンはその願いをはねつけます。
クリュセスはアポロン神にギリシャ軍を苦しめるよう祈願。アポロンはその願いを聞き入れ、ギリシャ軍の中に疫病を流行らせます。
アキレウスの激怒
疫病対策の軍議が開かれました。預言者カルカ―スは、総大将アガメムノンが怖かったのですが、アキレウスの保護を得て告げました。「クリュセイスを返さなかったから、アポロン神が怒ったのだ」と。
アガメムノンは激昂しましたが、最後には娘を開放することに同意。その代わりに、アキレウスの戦利品ブリセイスをよこせと命令しました。
今度はアキレウスは激怒。「自分はもう戦わない、故郷に引き上げる」と宣言。
ギリシャ軍にとって、アキレウスの不参戦は致命的なことです。
その後、ギリシャ軍の劣勢が続きます。ある日パリスの放った矢が、医術で有名なアスクレピオスの息子で軍医のマカオンを傷つけました。老将ネストルは彼を自分の戦車に乗せ、自分の陣営に運び入れました。
遠くから見ていたアキレウスは、親友パトロクロスを見舞いにやります。
パトロクロスの死
老将ネストルはここぞと思い、パトロクロスを説得。
「アキレウスを戦いに復帰させてくれ。さもなくば、君がアキレウスの甲冑をつけ、戦場に出てくれないか。そうすれば、ギリシャ軍は勢いがつくし、トロイア軍はひるむだろう」
しかし、アキレウスは戦いに出ることを拒否。ただ、多くの武将が負傷していることを知っていましたので、パトロクロスの出陣は承諾。甲冑をかすことも了承し、助言だけしました。
「俺がいなければ、城砦は落ちない。だから決して深追いしてはならない」
パトロクロスがアキレウスの軍勢ミュルミドンを率いて戦場に出ると、老将ネストルの予想通りでした。ギリシャ軍は喝采をあげ、トロイア軍は色を失いました。
パトロクロスは、ゼウスの息子サルペドンを倒しましたが、調子に乗ってアキレウスの助言を忘れ、城砦の近くまで深追いしてしまいました。
結果、パトロクロスはトロイア随一の勇将へクトールに倒されます。ギリシャ勢により死体は自陣に運ばれましたが、アキレウスの甲冑はヘクトルに奪われてしまいました。
アキレウスの出陣とヘクトルの死
アキレウスは大きな悲しみに襲われ、うめき声をあげました。その声を母である女神テティスが聞き、彼を訪れ慰めます。
母はヘパイストスに新たな甲冑を作ってもらうため、オリュンポスの鍛冶場に行きます。そして、夜明け前その新しい見事な甲冑をアキレウスの元に届けたのです。
アキレウスの出陣に、トロイア軍は意気もくじけ、逃げだします。アポロン神の助言もあり、ヘクトルは少し戦場から離れて戦況を見ていました。
しかし、女神アテナがヘクトルの勇敢な弟デーイポボスに変身して、ヘクトルをアキレウスと戦うようにしむけます。
こうして、アキレウスはへクトールを倒し、パトロクロスの復讐を遂げたのです。アキレウスは無慈悲にもヘクトルの体を自分の戦車に結びつけると、トロイアの城砦の周りを走ります。
ニコライ〈アキレウスとパトロクロス〉
パトロクロスの葬送競技(オリンピックの起源)
ヘクトルを引きずったまま自陣に引き上げたアキレウス。親友パトロクロスの火葬壇を築き、葬儀をとりおこないました。その後、戦車競争、格闘、拳闘、弓術などの葬送競技会が開かれました。
- 第一の競技「戦車競争」
- 第二の競技「拳闘」
- 第三の競技「角技」
- 第四の競技「徒競走」
- 第五の競技「槍試合」
- 第六の競技「鉄の塊」(円盤投?)
- 第七の競技「弓」
- 第八の競技「槍投げ」