フランソワ〈デーイアネイラの誘拐〉
ヘラクレスの妻デイアネイラを襲うネッソス
オンパレーとの3年間の生活の後、ヘラクレスはデイアネイラと結婚し、平和に暮らしていました。
ある日、旅に出かけたヘラクレスとデイアネイラは、ある河にさしかかりました。この河の渡し守がケンタウロス族のネッソス。ヘラクレスは自分は河の浅瀬を渡ることし、デイアネイラをネッソスに頼みました。
しかし、大急ぎで向こう岸に着いたネッソスがなにを血迷ったのでしょうか、デイアネイラをさらって逃げようとします。デイアネイラは大声を出して助けを求めました。すぐさま、ヘラクレスはヒュドラの毒矢をネッソスに放ちました。
ネッソスは、デイアネイラに言い残しました。
「ヘラクレスの愛が離れたり、他の乙女に向かった時は、この血を衣服に浸して着させなさい。愛を取り戻せますから」
デイアネイラは言われたままに、ヒュドラの毒が混ざった彼の血を採っておきました。
ネッソスの悪だくみとデイアネイラの自殺
ヘラクレスが征服したオイカリアの王女イオレーを捕虜にした時、ヘラクレスは神々に感謝の儀式を上げるため、使いの者リカースを家に儀式用の衣服をとりに行かせました。
この時、イオレーに嫉妬したデイアネイラは、ネッソスの血を浸した服をリカースに持たせたのです。
ヘラクレスがこれを着ると、体温で暖まるにつけ猛毒が体に染み込みます。彼は苦しさから、側にいたリカースを海に投げてしまいました
。服を脱ぐにも、服は焼けただれた体にまといつき離れません。肉ごと衣服をはぎとり、何とか家に帰り着いたヘラクレス。デイアネイラは自分がネッソスにだまされたことを知り、自ら命を絶ちました。
ジョルダーノ〈火葬壇上のヘラクレス〉
ヘラクレスの最後と神格化
死ぬ覚悟を決めたヘラクレスは、オイテー山に登り、火葬の薪を積み上げ、棍棒を枕にし、ライオンの毛皮を体にかけました。その弓をピロクテテスに渡すと、火をつけるよう命じました。
ヘラクレスの顔は、日常に食卓に着くような穏やかな表情でした。神々はヘラクレスの死を惜しみ、悲嘆にくれました。
しかし、ゼウスは明るく宣言しました。
「ヘラクレスの難業はみんな知っているところである。また、彼の半分の人間の部分は燃え尽きたが、半分は神である私の資質で永遠に滅ぶことはない。ヘラクレスを神々の座に迎えいれるつもりだ」
ゼウスの言葉は最初自分への当てこすりだと感じたヘラ。ヘラクレスの人間の部分が焼き尽くされ、残った気高い部分が姿を現してくると、今までのヘラクレスに対する憎しみが消えてくるのを感じてきました。
ゼウスがヘラクレスを4頭だての馬車で天に運び上げて住まわせると、アトラスは天球の重みが増したことを感じました。ここにいたり、ヘラも完全にヘラクレスと仲直りして、娘のヘーベーを妻に与えたのです。
ルモワーヌ〈ヘラクレスの神格化〉
※上の絵画では、ゼウスが娘ヘーベーの手を取って、右中央の棍棒を持ったヘラクレスに渡そうとしていいます。