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パリスとメネラオス〈パリスとメネラオス〉

あらすじ

トロイア軍の王子パリスは戦場の前に進み出て、ギリシャ軍に一騎打ちを挑みます。

するとヘレネの夫メネラオスが名乗り出ますが、パリスは恐れて自陣へ逃げ込んでしまいました。

兄ヘクトルに激しく叱責されたパリスは、ヘレネと財宝を賭けてメネラオスと決闘することを提案します。

メネラオスもこれを受け入れ、両軍は決闘の結果で戦争を終わらせる誓約を交わすことになります。

一方、城門の上ではヘレネが老王プリアモスとともに戦場を見つめ、ギリシャ軍の英雄たちの姿を語ります。

こうして両軍は、決闘の誓いのため王を戦場へ呼ぶのでした。

「誰でもよい、私と一騎打ちしてみよ」――パリスの挑発

ギリシャ軍とトロイア軍は対峙し、今にも戦いの火蓋が切られようとしていました。

そのとき、神のような美貌を持つトロイアの王子パリスが、トロイア軍の前に進み出て叫びました。

「誰でもよい! 我と一騎打ちしてみよ!」

この挑発を聞き、ただちに反応した男がいます。
それは、ヘレネの夫であるメネラオスでした。

「これぞ、我が妻ヘレネを奪った男を懲らしめる好機!」

彼は狂喜し、戦車から身を躍らせて地上へ降り立ちます。

しかし――

メネラオスの姿を見た瞬間、パリスの勇気は消え失せました。
死の恐怖にとらわれた彼は、慌てて自陣へ逃げ込んでしまったのです。

これを見た兄のヘクトルは、激しく叱りつけました。

「このろくでなしめが!
姿形こそ誰にも引けを取らぬが、正体はただの女たらしだ。

お前のような男は、生まれてこなければよかったのだ。
メネラオスの前に立ち、戦う勇気はないのか!」

パリスの決意――「ヘレネを賭けて決闘しよう」

兄ヘクトルに痛烈に叱られたパリスは、ようやく言い返しました。

「兄者のお叱りはもっともだ。
だが、神が与えた美しさまで責められても困る。

もし兄者が望むなら、メネラオスと一騎打ちしよう。
ヘレネとすべての財宝を賭けて戦うのだ。

勝敗が決まったなら、両軍は誓約して和平を結べばよい」

この提案を聞き、ヘクトルは喜びました。
彼はすぐに戦場の中央へ進み出て、ギリシャ軍にその提案を伝えます。

するとメネラオスが答えました。

「この戦争は、もとはと言えば、わしとパリスとの争いから始まった。
それが今や、国と国との戦いになってしまった。

わしは、それがつらい。

だからこそ、わしとパリスの決闘で決着をつけたい。
勝敗が決まれば、両軍とも戦いをやめるべきだ。

そのためにも神々に生贄を捧げ、誓約を交わそう。
そしてトロイア王プリアモスを呼んでいただきたい。

おぬしら若者の誓いだけでは、信じることができぬからだ」

美女ヘレネ、城門から戦場を見つめる

そのころ、トロイアの宮殿ではヘレネが大きな織物を織っていました。

その布には、ギリシャ軍とトロイア軍の戦いの様子が織り込まれていました。

そこへ、虹の女神イリスが現れます。

「ヘレネよ、こちらへ来てご覧なさい。
今、ギリシャ軍とトロイア軍が対峙し、パリスとメネラオスの決闘が始まろうとしている」

ヘレネは、自分こそがこの戦争の原因であることを思い出し、涙を流しました。

それでも彼女は、老王プリアモスと長老たちがいるスカイア門の上へ向かいます。

城壁の上で戦場を見ていた長老たちは、あらためてヘレネの美しさに見とれ、ひそひそと語り合いました。

「これほどの美しい女なら、両軍が九年も戦ってきたのも無理はない」

「しかし、ヘレネは元の夫に返すべきだ。
そうでなければ、この都にも子孫にも禍いが残るだろう」

老王プリアモス、ギリシャの英雄たちを尋ねる

老王プリアモスは、優しくヘレネに声をかけました。

「可愛い娘よ。
ギリシャ軍の中で、ひときわ大きなあの武将は誰か」

ヘレネは答えます。

「ギリシャ軍の総大将アガメムノンです。
わたしの元夫メネラオスの兄にあたります」

王は感心して言いました。

「これほどの軍勢を率いるとは、さぞ神に愛されている男なのであろう」

続いて王は尋ねます。

「では、軍の中を見回っている、あの男は誰だ」

「彼はオデュッセウスです。
その智略は、神にも劣らぬと言われています」

すると王の賢明な相談役アンテノルが言葉を添えました。

「かつて、オデュッセウスとメネラオスがヘレネ様のことでトロイアへ使者として来たことがありました。

体格ではメネラオスの方が立派でしたが、座っているときはオデュッセウスの方が大きく見えました。

そして彼が立ち上がり話し始めると、この世に彼に並ぶ弁士はいないと思われました」

やがてプリアモスは、もう一人の巨躯の戦士を指して尋ねます。

「では、あの偉丈夫は誰か」

ヘレネは答えました。

「彼こそ、ギリシャ軍の砦と呼ばれるアイアスです。

その隣にはクレタ島の王イドメネウスもおります。

……ですが不思議です。
わたしの兄弟であるカストルとポリュデウケスが見当たりません」

しかしその二人――

カストルとポリュデウケスは、すでに故郷スパルタで亡くなっていたのです。

ヘレネは、そのことをまだ知らないのでした。

王プリアモス、決闘の誓約のため戦場へ

やがて伝令が城門に到着しました。

「王よ、パリスとメネラオスの決闘の誓約のため、戦場へお越しください」

馬車が用意され、プリアモス王はそれに乗り込みます。
そばには相談役アンテノルも付き添いました。

こうして老王は、二人の運命を決する決闘の誓約のため、戦場へ向かったのです。