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ポリュペモスの洞穴にいるオデュッセウスヨルダーンス〈ポリュペモスの洞窟にいるオデュッセウス〉

あらすじ

キュクロプスの洞窟に閉じ込められたオデュッセウスたちは、巨人ポリュペモスに仲間を次々と食われるという恐ろしい状況に追い込まれます。

そこでオデュッセウスは策略を巡らせ、アポロンゆかりの強い酒を巨人に飲ませて酔いつぶれさせました。そして自分の名を「誰もおらぬ」と名乗り、巨人の油断を誘います。

眠った隙に焼いた杭で巨人の目を突き刺し、仲間のキュクロプスたちの誤解を利用して危機を逃れました。

さらに羊の腹に身を隠すという大胆な方法で洞窟から脱出します。

しかしオデュッセウスは思わず自分の名を名乗ってしまい、それを聞いたポリュペモスは父神ポセイドンに祈り、彼の帰国に大きな災いをもたらすのでした。

巨人を酔わせる ― オデュッセウスの策略

キュクロプスは帰ってくると、山羊と羊の乳をしぼり、その後また二人の部下を捕まえました。
そして床に叩きつけ、手足をばらばらにして夕食として平らげてしまったのです。

満腹になったキュクロプスに、オデュッセウスは言いました。

「人肉を食ったところで、この酒を飲んでみよ。アポロンゆかりの美酒だ」

キュクロプスはその酒を気に入り、三度もおかわりをして上機嫌になります。
そしてオデュッセウスに問いかけました。

「この島の葡萄酒もな、神の酒アンブロシアやネクタルにも負けておらぬ。ところで、お前の名はなんという?」

「〈誰もおらぬ〉という名だ」

オデュッセウスは静かに答えました。

「わたしの名は〈誰もおらぬ〉という」

するとキュクロプスは笑いながら言いました。

「では、〈誰もおらぬ〉は最後に食うことにしよう。俺からのご褒美だ」

こうしてキュクロプスはさらに酒を飲み続け、ついには酔いつぶれて眠り込んでしまいました。

その隙を見て、オデュッセウスたちは尖らせた大木を火の灰の中に入れます。
火がつく寸前まで真っ赤に焼き、それを数人で持ってキュクロプスの頭へ登りました。

そして、燃える杭を錐のように回しながら、巨人の眼球へ突き刺したのです。

キュクロプスは身の毛もよだつ大きな悲鳴を上げ、仲間たちを呼び寄せました。

「ポリュペモスよ、いったい何があったのだ!」

「企みによって、わしを殺そうとする奴がいるのだ!
〈誰もおらぬ〉がそうなのだ!」

すると外から声が返ってきました。

「ひとり住まいのポリュペモスよ、誰もおらぬのなら、それはゼウスの仕業だろう。
お前の父神ポセイドンにでも祈るがよかろう」

こうして、集まってきた仲間のキュクロプスたちは事情を誤解し、そのまま帰ってしまいました。

ポリュペモスに対するオデュッセウスティバルディ〈ポリュペモスに対するオデュッセウス〉

脱出のための新たな策

オデュッセウスは、内心で自分の策略が見事に成功したことに満足しました。

しかしポリュペモスも愚かではありません。
朝になると洞窟の入口に立ち、外へ出る羊や山羊を一頭ずつ触って確かめることにしました。
人間が逃げ出さないよう見張るつもりなのです。

そこでオデュッセウスは、牡羊三頭を横に並べ、藤のつるで結びつけました。
真ん中の羊の腹の下に、部下をひとりずつぶら下げるためです。

そして彼自身は、最も大きく立派な牡羊の腹にしがみつきました。

ポリュペモスは羊を触って確かめましたが、まさか羊の腹の下に人間が隠れているとは思いもよらず、気づくことはありませんでした。

脱出成功 ― しかし英雄は沈黙できなかった

こうしてオデュッセウスたちは無事に洞窟の外へ出ると、羊も連れて船まで逃げ帰りました。
仲間の船とともに急いで沖へ漕ぎ出します。

十分に遠ざかったところで、オデュッセウスはポリュペモスへ向かって大声で叫びました。

「ポリュペモスよ、われらが馬鹿で間抜けではないことが分かったであろう。
客人をもてなさなかった罰を受け、盲になったのはお前自身のせいだ」

怒り狂ったポリュペモスは山頂の岩を砕いて持ち上げ、声のする方へ投げつけました。
岩は船のすぐそばに落ち、その大波は船を陸へ押し戻すほどでした。

オデュッセウスたちは必死に漕ぎ、ようやく船を陸から先ほどの二倍ほどの距離まで離します。

するとオデュッセウスは、またもや叫ぼうとしました。
しかし今度は部下たちが必死に止めます。

「無謀なお人だ! またあの乱暴者を怒らせようとなさるのか!」

それでもオデュッセウスは怒りを抑えきれず、ついに叫びました。

「ポリュペモスよ!
もしお前の目を潰した者の名を尋ねる者がいたら、こう答えよ。
それはイタケの住人、ラエルテスの子、オデュッセウスであるとな!」

船に大岩を投げるポリュペモスレーニ〈船に大岩を投げるポリュペモス〉

よみがえる予言 ― テレモスの言葉言

するとポリュペモスは嘆きました。

「なんということだ……。
昔聞いた予言が、ついに我が身に起こったのか。

キュクロプス一族に予言をしていたテレモスが、
『いつの日かオデュッセウスの手によって明を失う』
と語っていたのだ。

それ以来、わしは武勇に優れた英雄が現れるのを待っていたというのに……」

そしてポリュペモスは叫びました。

「オデュッセウスよ、戻ってこい!
土産物をたっぷり与えてやろう。
わが父ポセイドンに頼めば、お前を故郷へ帰してやる。
父なら、この眼も癒してくれるだろう」

しかしオデュッセウスは冷たく答えました。

「大地を揺るがすどんな神であろうとも、お前の眼を癒すことはできまい。
それどころか、お前の命を断ち、冥界へ送れたならどれほどよかったことか」

ポリュペモス、父ポセイドンに祈る

ポリュペモスは天に向かって祈りました。

「聞いてください。
もし私があなたの倅であり、あなたが私の父であるならば、
オデュッセウスを無事に帰国させてはなりません。

もし帰国する運命にあるならば、
帰国を遅らせ、部下をすべて失わせ、
他国の船で帰るような惨めな目にあわせてください。

そして屋敷に帰ったあとも、
なお多くの苦難に遭うようにしてください」

父神ポセイドンは、息子ポリュペモスのその願いを聞き入れました。

こうしてオデュッセウスの苦難の旅は、さらに長く続くことになるのです。
そして遠い故郷イタケでは、妻ペネロペイアと息子テレマコスにも、やがて災難が降りかかろうとしていました。