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ポリュペモスロマーノ〈キュクロプス族のポリュペモス〉

オデュッセウス、素性を明かす

「そのトロイアの木馬を考え出したのが……オデュッセウス、この私です」
そう語り始めたオデュッセウス。その後の経緯を語ることに、もはやためらいはありません。

トロイア戦争からの帰途、オデュッセウス一行はまずキコネス人の国を略奪しました。しかし、キコネス人の多くの近隣の同族からの逆襲にあい、大激戦の末各船とも6人の部下を失ってしまいました。

次に立ち寄ったのが、ロートパゴイ人の国。ここで魔力があるロートスの実を食べて、帰国の意志を失くす部下が続出。彼らを強制的に船に閉じ込め、からくも出航するありさまであったと語りました。

ロートパゴス族のもとから部下たちを連れ戻すオデュッセウス〈ロートパゴス族のもとから部下たちを連れ戻すオデュッセウス〉

一つ目巨人キュクロプスの島

キュクロプスの島は自然の食物やたくさんの山羊、羊に恵まれていました。だから、キュクロプス一族は働きません。

この島の近くにも山羊がたくさんいる平坦な島がありました。オデュッセウス一行は山羊を捕え、十分な肉とブドウ酒の食事をし、その日は眠りにつきました。

次の日、オデュッセウスは部下12人を連れて、山上の探検に出かけました。どんな種族が住んでいるのかわかりませんので,土産品としてアポロンの祭司マロンからもらった美酒も持参しました。

山上の洞窟に着くと、誰の姿もありません。洞窟の中には豊富なチーズ、子山羊と子羊がたくさん飼われていました。部下たちは、これらを盗み、さっさと船に戻ろうと言いました。

しかし、オデュッセウスはこの洞窟の主を一目見たかったので、部下の意見を取りあげません。その時には、まだここの主が部下にとってとんでもない疫病神になろうとは思ってもいなかったのです。

ポリュペモスのいる風景ペーテルス〈ポリュペモスのいる風景〉

閉じ込られたオデュッセウスたち

みんなでチーズを食べていると、主の一つ目巨人キュクロプス〈ポリュペモス)が帰ってきました。オデュッセウスたちはその巨大な姿に驚き、とっさに物影に隠れました。主は薪を洞窟に放り込むと、山羊と羊の雌のみ洞窟の中にいれました

その後、人間20人でも持ち上げられそうもない大岩で入り口を閉じました。いまや、オデュッセウスたちは外に出られなくなったのです。

キュクロプスは山羊と羊の乳をしぼると、火をおこしました。洞窟の中が明るくなったので、オデュッセウスたちは気づかれてしまいました。
「見かけぬ奴らだな、何者だ。海賊かなんかで、気ままに海原をさまよっているのか」

恐ろしくもあったのですが、オデュッセウスは勇気を出して答えました。
「われらはトロイアを滅ぼしたギリシャの者だ。帰る途中迷ってしまいここにたどりついた。客人に対するしかるべき情けをかけてくださらぬか。ゼウスは客の守り神であるからな」

「風来坊よ、お前は馬鹿か。ゼウスの掟を敬えだと。われらキュクロプス一族は神など屁とも思わぬ。神よりわれらの方が強いのだからな。ところで、お前らの船はどこにある?」

オデュッセウスは思案の末、答えました。
「ポセイドンの嵐によって、岬で破壊されてしまった。ここにいる者しか生き残らなかった」

オデュッセウスの二人の部下、食事にされる

突然、キュクロプスは二人の部下を捕まえました。すると床にたたきつけ、手足をばらばらにすると夕飯の中に入れ平らげてしまったのです。満腹になった主は、そのまま眠ってしまいました。

次の日の朝も、二人の部下がキュクロプスの食事になりました。食後、キュクロプスは家畜の世話をするために出かけます。もちろん、入り口は大岩で塞ぎ、オデュッセウスたちは逃げることができません。

オデュッセウスはなんとか逃れる手だてを思案。オリーブの材木があったので、それを2メートル程の長さに切って先を尖らせました。そして、キュクロプスが帰ってくるのを待っていました。