カバネル〈パイドラー〉
テーセウスの新妻パイドラーと息子ヒッポリュトス
アマゾンの妻アンティオペーの死後、テーセウスはミーノース王の娘アドリアネーの妹パイドラーを妻としました。
美徳をかねそなえた前妻の息子ヒッポリュトス。新妻パイドラーはこの義理の息子に恋心を抱くようになりました。
しかし、ヒッポリュトスは女性には興味がなく、継母の恋をはねつけます。彼には、処女神アルテミスを崇拝し、狩りにしか関心がなかったのです。
パイドラーの恋は憎悪に変わり、また、真実が夫テーセウスに知られることを恐れ「ヒッポリュトスに辱めを受けました」と遺書を残し自殺してしまいました。
怒ったテーセウスは、息子に災いがくだるよう、海神ポセイドーンに祈りました。
ヒッポリュトスが二輪車に乗り、海辺を走っていた時のこと。海から怪物が姿を現すと、馬は暴れ、二輪車を粉々にし、彼は死んでしまいました。
後日、彼が崇拝していた女神アルテミスの助けもあって、医師アスクレピオスが彼を生き返らせます。その後、彼はイタリアでエーゲリアというニンフに保護されます。
アルマ=タデマ〈ヒッポリュトスの死〉
テーセウス、美少女ヘレネーの誘拐
新妻パイドラーが死んだ頃、ペイリトオスも妻ヒッポダメイアを亡くしていました。二人は大神ゼウスの娘を妻にしようと相談。テーセウスは幼いヘレネー(トロイア戦争の原因)を選び、ペイリトオスはなんと冥界の女王ペルセポネーを選びました。
二人はスパルタにいたヘレネーを誘拐し、アテナイまで連れて帰ることに成功します。
しかし、いずれスパルタのヘレネーの兄弟ディオスクーロイ(カストールとポリュデウケース)がヘレネー捜索に動きだすことを予想していました。戦争を避けたいテーセウスはヘレネーを母アイトラーにゆだね、アテナイから離れた場所に隠しました。
〈テーセウスとペイリトオス、ヘレネとサイコロで遊ぶ〉
テーセウスとペイリトオス、冥界「忘却の椅子」
その後、テーセウスとペイリトオスは冥界へいき、なんとも脳天気な行動をします。ペルセポネーの夫である冥界の王ハーデースに「ペルセポネーを妻にしたい」と目的を話してしまいました。
内心呆れはてたハーデースは、二人に椅子に座るようすすめました。この椅子は「忘却の椅子」と呼ばれ、座ると身動きできなくなり、記憶を失ってしまうのです。こうして、二人はそのまま冥界に捕われの身となってしまいました。
やがて、ヘラクレスが「ケルベロスの試練」で冥界にやってきた時、テーセウスだけは助けられました。ペイリトオスは助けだされず、その運命のままにゆだねられました。
テーセウスとペイリトオスが冥界に捕われている間に、ヘレネーは兄弟ディオスクーロイに発見され連れ戻されました。
また、テーセウスはアテナイの王位も奪われて、スキューロス島の王リュコメーデースのもとに身を寄せました。王は彼に王位を奪われるのを恐れ、彼を裏切り殺してしまいます。
後年、アテナイの将軍キモーンはテーセウスの遺骸を発見すると、アテナイに持って帰りました。遺骸は、テーセウスのために建てられたテーセリオンという社に納められることになりました。
→ヘラクレスの難業[11・12]黄金の林檎と冥界の番犬ケルベロス
ブルーノガス〈ヘレネーを助けるディオスクーロイ〉