1話5分で読めるギリシャ神話

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アドニス アネモネの花

ヴィーナスとアドーニス
アブラハム・ブルーマールト〈アフロディーテとアドニス〉コペンハーゲン国立美術館

アフロディーテ(ヴィーナス)とエロースが遊んでいる時、エロースの矢がアフロディーテの胸をキズつけました。キズがいえる前に、女神が初めて見たのがアドニスで、彼のとりこになってしまいました。

アフロディーテは、女神を祭っているパポスの町、クニドスの島、アマトゥースにも行かず、また神々の住処オリンポス山にも行かず、ただひたすらアドニスと一緒にいました。狩りをしたり、山野を駆け回っている女神は、まるで狩猟の女神アルテミスのようです。木陰で休んだり、自分の美しさばかり気にかけていた頃とは全く違った毎日です。

「襲ってくるようなオオカミやクマやイノシシなどには近づかないように。決して自分の勇気を試したり、思い上がっては行けません」などなど。そう諭してから、アフロディーテは白鳥の二輪馬車で久しぶりにキプロス島に向かいました。

しかし、若者は人の言うことにはなかなか耳をかしません。

犬たちが大きなイノシシを洞穴から狩り出すと、アドニスは槍を投げつけました。槍は見事にイノシシの脇腹に命中。が、イノシシはこのキズごときでは倒れません。猛然とアドニスに向かって駆けてきます。そして、逃げ出したアドニスの脇腹をその牙が貫きました。
「ウギャー!」

アドニスの死
ルーベンス〈アドニスの死〉イスラエル博物館

その声は、天空のアフロディーテにも届きました。女神は白鳥の二輪車の向きをアドニスの声がした場所に向けました。

息絶えようとしているアドニスを抱きかかえ、女神は胸元をたたき、髪をかきむしりながら言いました。
「運命の女神よ、全てがあなたたちに屈するわけではない。アドニスは永遠に私の悲しみの思い出となり、毎年彼のために祭が開かれ、その死にざまは繰り返し舞台となるであろう」

アフロディーテが神酒ネクターを流れた血に注ぐと、血は泡立ち、やがて真っ赤な花が現れました。この花の命は短いのです。風(アネモス)が花を咲かせたかと思うと、次の風が花を散らせるので「風の花(アネモネ)」と名付けられました。

このイノシシは、一説にはアフロディーテの情夫・軍神アレスであったとの説もあります。

アネモネ